平和な日常~秋~3

「たまにはこんな休日もいいですね」

その後昼食の後片付けを終えた横島は午後をどうするかと少女達と相談したが、タマモを含めて大多数がおばあちゃんの家を気に入り今日は夜までここでお世話になることにしていた。

横島としては牧場か紅葉でも見に行こうと考えていたが、あまりに落ち着く環境に日頃は元気が有り余っている少女達ですら今日はことでゆっくりしたいと言い出したのだ。

その結果、午後はおばあちゃんの家で自由に過ごすことになった。

読書をして過ごす者も居れば広い庭や畑で遊ぶ者もいるし、おばあちゃんの家でゆっくりくつろぐ者もいる。

特に伸二や教師陣にとっては久しぶりのゆっくりとした休日であり、まるで時間がゆっくりと流れるような世界に身を任せていく。


「そう言えば長瀬さんは畑に詳しいですわね。 ご実家は農家ですか?」

「そうでござるよ。 山奥の田舎の農家ゆえ田畑に関してはよく知ってるでござる」

「えっ!? 楓姉の家は忍者じゃないの!?」

そのまま穏やかな時間はゆっくりと過ぎてゆくが、縁側では午前中の芋掘りでやけに畑に詳しく活躍した楓の話になっていた。

2-Aにも祖父母が農家だという者は何人か居るが、実家が農家だと言う者は今日来たメンバーでは楓だけだった。

あやかに実家の職業を尋ねられた楓は山奥の小さな集落で農業をしていると告げるが、楓が忍者だと信じてる鳴滝姉妹は驚きの声を上げる。


「拙者は忍者ではないでござるよ」

鳴滝姉妹に詰め寄るように忍者かと聞かれると一応否定する楓だが、日頃から忍術に詳しく寮で同室の鳴滝姉妹に忍術モドキを教えたりしてるので鳴滝姉妹には忍者だと思われてるし、常識ある友人は隠れ忍者マニアかと思ってたりもするが。

そんな鳴滝姉妹の言葉に今時忍者は居ないだろうと内心でつっこむ者も何人か居るが、実のところ楓の実家は忍者の家系であり集落も昔は忍者の里の一つだった地域である。

まあ忍者と言っても現代の世の中では忍者として満足に飯が食えるはずもなく、実際に忍の技を受け継ぐ者は農業や林業などが本業になっているのだが。

ただ近年では関東魔法協会が積極的に忍者を雇ってるとの事実もあり、楓の故郷の集落からも数人だが雇われて麻帆良学園や雪広グループで働いているので、それが楓が麻帆良学園に入学するキッカケにもなったなんて裏事情もあった。

実際楓は麻帆良には裏の実力を持つ者が多くその者達の組織があるのは知っているが、詳しくは知らないし組織の存在も知らないフリをしている。

彼女の場合は今のところ魔法協会に興味がないことから知らないフリをしてるが、実際の立場的には横島と近く魔法協会外のはくれ魔法関係者は大抵は知らないフリをするのが常識だった。


「ねえ、にんじゃってなに?」

「忍者ってのは侍みたいな昔の職業だよ。 この前見ただろ」

「かざぐるまなげるひとだ!」

一方楓達の話に忍者が何か分からない様子のタマモだったが、時代劇はハニワ兵やさよが好きなので割と見ている。

タマモの中では忍者と言えば風車を投げるあの人らしい。



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