平和な日常~秋~3
さて台所のおばあちゃんと横島達だが、こちらも賑やかに料理は続いていた。
横島達が賑やかに料理するのはいつものことだが、この日は横島は脇役でありおばあちゃんが主役である。
「思ってたより上手だね」
料理や野菜の話で盛り上がる台所だったが、そんな中おばあちゃんはこれも修業と考えて手伝う伸二の手際を見て素直に褒めていた。
実は今日来たメンバーで横島とタマモ以外だと、伸二が横島の仕入れに着いて行きおばあちゃんと顔を合わせたことがある。
顔を会わせる度に頑張りなさいとさりげなく声をかけていたのだ。
「一週間でなんとか形になりました」
「たいしたもんだよ。 私なんか結婚してからしばらくは怒られてたからね」
相変わらず肩に力の入った感じの伸二だが、おばあちゃんの昔話を聞くと少しホッとした表情に変わる。
話の内容は主におばあちゃんの若い頃の料理での失敗談や苦労話だったが、何故か自分はまだやれると勇気が沸いて来るような話だった。
それは横島に習っている弊害なのかもしれないが、伸二は自分が本当に一ヶ月以内に店を再開出来るか不安なのである。
元々料理の経験はさほどなくファミレスの厨房でやれたんだから定食屋くらいは出来るだろうと安易に考えたのが間違いなのだが、横島に習ってからも横島や木乃香と自分の実力の差に一番驚いたのは伸二自身なのだ。
自分の甘さに一週間で気付いたまでは良かったが、問題は伸二にはしっかり修業する時間もお金もないことだろう。
今頃になって母親の苦労や努力を理解したが、だからこそ今更店がダメだったとは入院中の母親には絶対に言えなかった。
一方おばあちゃんと話をしながら表情が明るくなる伸二に、ホッとした表情を見せていたのは横島である。
横島は横島なりに伸二に力を貸しているが、見た目の年齢が年上ということもあり同時に結構気を使ってもいた。
料理や店の経営に関しては横島達が親身に教えてはいたが、自分に自信を失い焦りがある伸二は本当に大丈夫なのか不安が募っていたのは当然横島も気付いている。
ただだからと言って横島の立場からは伸二が満足に修業する資金の援助なんて出来ないし、伸二から明かされもしない悩みにアドバイスすることも出来ない。
自分で出来ることは自分でしようと、悩み努力する伸二を横島は見守るしか出来なかったのだ。
(年の功ってやつかな)
正直伸二の表情が冴えないことに気付いていたからこそ、おばあちゃんは話し掛けたのだろうと横島は思う。
実際にその通りであり元気で笑顔の少女達がいるせいか、伸二の様子が優れないのはおばあちゃんどころか周りの少女達も気付く人は気付いていた。
(周りに自分を心配してくれる人が居ることに気付くといいけどな)
麻帆良は本当に優しい街であり、悩み苦しむ者に手を差し延べる人は多い。
そして伸二のことも心配している者は少なからず存在するのだ。
伸二がそんな人々の存在に気付くことが出来れば、きっと伸二は母親が退院するまで店を守れるだろうと横島は思う。
今回がそのきっかけになることを横島は願ってやまなかった。
横島達が賑やかに料理するのはいつものことだが、この日は横島は脇役でありおばあちゃんが主役である。
「思ってたより上手だね」
料理や野菜の話で盛り上がる台所だったが、そんな中おばあちゃんはこれも修業と考えて手伝う伸二の手際を見て素直に褒めていた。
実は今日来たメンバーで横島とタマモ以外だと、伸二が横島の仕入れに着いて行きおばあちゃんと顔を合わせたことがある。
顔を会わせる度に頑張りなさいとさりげなく声をかけていたのだ。
「一週間でなんとか形になりました」
「たいしたもんだよ。 私なんか結婚してからしばらくは怒られてたからね」
相変わらず肩に力の入った感じの伸二だが、おばあちゃんの昔話を聞くと少しホッとした表情に変わる。
話の内容は主におばあちゃんの若い頃の料理での失敗談や苦労話だったが、何故か自分はまだやれると勇気が沸いて来るような話だった。
それは横島に習っている弊害なのかもしれないが、伸二は自分が本当に一ヶ月以内に店を再開出来るか不安なのである。
元々料理の経験はさほどなくファミレスの厨房でやれたんだから定食屋くらいは出来るだろうと安易に考えたのが間違いなのだが、横島に習ってからも横島や木乃香と自分の実力の差に一番驚いたのは伸二自身なのだ。
自分の甘さに一週間で気付いたまでは良かったが、問題は伸二にはしっかり修業する時間もお金もないことだろう。
今頃になって母親の苦労や努力を理解したが、だからこそ今更店がダメだったとは入院中の母親には絶対に言えなかった。
一方おばあちゃんと話をしながら表情が明るくなる伸二に、ホッとした表情を見せていたのは横島である。
横島は横島なりに伸二に力を貸しているが、見た目の年齢が年上ということもあり同時に結構気を使ってもいた。
料理や店の経営に関しては横島達が親身に教えてはいたが、自分に自信を失い焦りがある伸二は本当に大丈夫なのか不安が募っていたのは当然横島も気付いている。
ただだからと言って横島の立場からは伸二が満足に修業する資金の援助なんて出来ないし、伸二から明かされもしない悩みにアドバイスすることも出来ない。
自分で出来ることは自分でしようと、悩み努力する伸二を横島は見守るしか出来なかったのだ。
(年の功ってやつかな)
正直伸二の表情が冴えないことに気付いていたからこそ、おばあちゃんは話し掛けたのだろうと横島は思う。
実際にその通りであり元気で笑顔の少女達がいるせいか、伸二の様子が優れないのはおばあちゃんどころか周りの少女達も気付く人は気付いていた。
(周りに自分を心配してくれる人が居ることに気付くといいけどな)
麻帆良は本当に優しい街であり、悩み苦しむ者に手を差し延べる人は多い。
そして伸二のことも心配している者は少なからず存在するのだ。
伸二がそんな人々の存在に気付くことが出来れば、きっと伸二は母親が退院するまで店を守れるだろうと横島は思う。
今回がそのきっかけになることを横島は願ってやまなかった。