平和な日常~秋~3

さてこの頃の横島達だが、宮脇兄妹の件に掛かりっきりという訳にもいかなく他にもやるべきことは幾つかあった。

十二月に行われる学園主催のパーティーにて木乃香が振る舞うスイーツの検討もしていたし、クリスマスケーキの販売をどうするかもそろそろ決めねばならない。

加えて麻帆良カレーと来年の納涼祭の話し合いも、やはり無関係とはいかないのだ。

ただ麻帆良カレーと納涼祭の方は夕映とのどかに任せつつある。

元々横島自身がほとんど口を挟まないこともあり、十一月の話し合いは夕映とのどかを横島側の代理人として参加させていた。

これが本格的な利害調整でも必要なら流石に二人では力不足なのだろうが、幸いにして横島の立場は必要だが重要ではない。

実際の細かな調整は大人達と行うので、二人はとりあえず横島側の人間として話し合いに参加するだけだった。

ただ夕映とのどかは頭の回転も早く庶民感覚や常識もあるので、実際には結構役立っていたが。

特に夕映は横島の身近で様々な出来事を見聞きしたりして経験したことで、その秘めたる才能を開花させ始めている。

それは横島のみならずあやかや超はもちろんのこと、多くの大人達と仕事をする貴重な機会を得られたことが原因だろう。

無論現状ではあやかや超のような突出した才能は見せてないが、あやかや超との相性も悪くなく横島の代理としては十分過ぎる働きをしていた。


「詳細を非公開の段階での問い合わせが三十八件ですか」

「情報は漏れるものネ。 実行委員会の設立の情報さえ掴めば後は想像するまでもないヨ」

そしてこの日は夕映とのどかは、あやかと超と麻帆良カレーの実行委員会の会合に参加していた。

現時点では実行委員会の事務局を雪広コンツェルン内に置かせてもらって対応しているが、実行委員会設立を知った飲食店関係者が自分達も加わりたいと問い合わせが増えて来ているらしい。

まあ実行委員会を設立した時点で、現在の自由勝手な麻帆良カレーが散乱する現状を本家本元がオリジナルとの差別化するのは考えなくてもわかる。

早々に勝馬に乗ろうとする人間が現れるのは当然だった。


「加盟店を増やすのは規定路線なので構いませんが、加盟店を管理するには最低限の人員と予算が必要ですわ」

正式な麻帆良カレーの提供店舗を増やすのは決まっているが、問題は増やした加盟店を管理する体制と予算が決まっていないことか。

必要な人員や予算の試算は雪広グループで行ったらしくあやかが関係者に資料を配り説明するが、問題は予算を誰がどの程度出すかだった。

現状では雪広グループが問い合わせ対応など実質的に働いているが、それもいつまでも無料で続ける訳ではない。

今後の活動を考えると加盟店には最低限のロイヤリティは払ってもらわねばならないし、その金額やなんかもある程度試算が出ており早く決めねばならなかった。

まあ最終的には雪広グループと麻帆良学園が予算や人員を出す中心になるのだろうが、今後の加盟店の数や売れ行きや観光客の数など様々な利害を考えねばならないのである。


「夕映、難しいよ」

「中学生が街の経済まで理解するのは無理があるです」

その結果お祭りやイベントではなく立派な経済活動に関わるハメになった夕映とのどかは、たくさんの情報と難しい話に四苦八苦しながら会合に参加していた。


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