平和な日常~秋~3

午後になり木乃香達が店にやって来ると、横島は今朝収穫した柿の加工に取り掛かろうとしていた。

庭の柿は渋柿の一種でありそのままで食べれる品種ではないので、食べるには渋抜きが必要となる。


「今回は一番シンプルに干し柿にしようか」

「干し柿ならウチも作ったことあるわ~ 京都の実家は周囲が山ばっかりやから渋柿もあったんよ」

いつものように木乃香とのどかとタマモを助手にして柿の加工を始めようとする横島だが、今回はシンプルに干し柿を作るらしい。

作業は至って簡単で皮を剥いて殺菌処理をして外に吊すだけである。

正直横島の持つ料理経験でも、柿の渋抜きなんかは小竜姫の持つ古い経験しかない。

一応知識として最近の渋抜き方法も調べたが、結局は経験があるベターな方法を選んだようだ。


「へ~、そうなんだ」

「秋は山に自生する柿や栗を拾ったり、きのこ狩りしたりとかもよくやったんよ」

タマモは危ないので皮むき器だったが横島達三人は包丁で一つ一つ柿の皮をむいていくが、干し柿に関しては意外にも木乃香が経験者だった。

しかも干し柿作りだけではなく山で自生してる柿や栗やきのこを、母や家に居る巫女さん達と取りに行った経験もあるらしく山は詳しいらしい。


「木乃香ちゃんって意外とアウトドア派なんだよな」

「お母さまがアウトドア派なんや」

地道な皮むきは続くが箱入り娘のお嬢様である木乃香の昔の話には、横島だけでなくのどかも少し驚いている。

見た目おっとり系の木乃香だが実は結構アウトドア派であり、通学にインラインスケートを使用したりと運動神経も悪くなく活動的な人物であった。

木乃香いわく母親の影響らしいが。


「……おいしくない」

一方タマモは皮むき器でお手伝いをしていたが、普通に食べられる甘柿との違いが気になるらしく匂いをクンクンと嗅いで、むいた皮を少しかじってみるが渋いその味に顔をしかめる。


「そのままじゃ食えんって言っただろうが」

日頃好き嫌いが全くないタマモの初めて見るまずそうな表情に、横島達は思わず笑ってしまう。

タマモとしては好奇心に勝てなかったのだろうが、どこか微笑ましい光景だった。

横島も生では渋くて美味しくないと教えてはいたが、美味しくないと言われると味が気になるのが子供の好奇心なのだろう。


「これが干したら美味しくなるんよ」

「せんたくものみたいだね」

美味しくないと言って慌てて水を飲むタマモに笑ってしまった木乃香だが、干せば渋みが抜けて美味しくなると教えていく。

ただタマモにとっては干すと言えば洗濯物しかイメージが沸かない。

ちなみに横島の家には明日菜から貰った洗濯乾燥機があるので必ずしも干す必要はないのだが、天気のいい日はハニワ兵が屋上で洗濯物を干している。

屋上の物干し竿はかなり錆びていたのだが、ハニワ兵が自分で磨いたりして直して使ってるらしい。

もちろん人に見られないように一応気をつけてはいるらしいく、加えて元々物干し竿がある場所が屋上の真ん中であり道路や周りの家からは見えない位置なので今のところ大丈夫なようだが。


タマモ的には柿も干せば洗濯物のようになるのかと考えると、正直味を想像出来ないらしい。



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