平和な日常~秋~2
この日の夕食も相変わらず賑やかだった。
近右衛門も店に度々訪れる常連だったが、基本的には来店時間が朝か夜遅いため店で木乃香に会うことはほとんどない。
この日は仕事の関係で早めに夕食にするらしく、たまたま早く店に来たことで一緒に食べれることになったようだ。
「やはり夕食は大人数で食べる方が美味いのう」
古い洋風建築の店内は夜になると照明の影響もあって独特の赴きがあったが、この日は鶏肉のソテーやかぼちゃの煮物などごくごく普通の夕食である。
基本的に夕食は余った食材を使うことが多く、この日は大量にあるかぼちゃも使っていた。
そんな夕食を楽しげにおしゃべりしながら食べる木乃香や明日菜やさよなどを見て、近右衛門は思わず嬉しそうな笑みをこぼす。
この平和で楽しい食卓を守るのに、彼がどれほど苦労を重ねたか少女達は知らない。
しかし守るモノがあるからこそ、近右衛門は今も走り続けているのだ。
「おじいちゃんも横島さんも、飲み過ぎはあかんえ」
テーブルには何種類もの料理が大皿に並んでおり個々で好きに取って食べるのだが、木乃香はみんなに取り分けてあげたり横島や近右衛門のお酒を注意したりと忙しい。
特に横島は普段から夕食時に軽く晩酌するが、最近は木乃香達が健康を気にし始めてしまい週に二日は休肝日にされている。
ちなみに木乃香達の前では吸わないタバコについても、止めるように再三言われていた。
「だんだん無くなった妻や娘に似て来たわい」
「そうなんっすか?」
「うむ、逆らうと後が怖いんじゃ」
ニコニコと笑顔でお酒を注意する木乃香の姿に、近右衛門は亡き妻や京都の娘を思い出すらしく苦笑いを浮かべている。
そんな近右衛門の言葉には横島のみならず明日菜や夕映達も興味をそそられるが、ニコニコとした笑顔と裏腹に逆らうと後が怖いらしい。
近右衛門の妻や娘は基本的に昔かたぎの女性で男性を立てる良妻賢母のような女性のようだが、芯が強い一面もあるらしく引かないところは引かないようだった。
(そういや、最初バイトの話した時も……)
そんな近右衛門の話も木乃香本人はニコニコと聞き流しているが、横島は木乃香と出会ってからのことを思い出すとなんとなく納得する。
一見すると優しく流されやすいようにも見える木乃香だが、実際には芯が強く決して安易に流されるタイプではない。
まあ我が強いというほど絶対に流されない訳ではないが、以外と要所を抑えてることは横島も理解していた。
実は元々横島という人物は人に流されやすい性格だけに、木乃香達に流された結果が現状とも言える。
「まあ、そのうち君も分かるじゃろうて」
少しの間考え込む横島だったが、近右衛門は意味深な笑顔を一瞬見せると小さな声でぽつりとつぶやく。
目の前の食卓を仕切っていたのは、間違いなく木乃香だった。
元々は横島が木乃香達に遠慮しない関係を望んだのだが、近右衛門は横島もそのうち自分の気持ちを理解するだろうと確信している。
横島と周りの少女達の複雑な関係がどうなるかは流石に近右衛門にも分からないが、現状でも横島が木乃香に上手く導かれているのは気付いていた。
本来横島が他者との深い関わりをあまり望まぬことにも気付いているし、それを木乃香達が上手く入り込んだことにも当然気付いていたのだ。
(懐に入れた者に少し甘過ぎるのは、彼の性分かのう)
それは横島の長所であり短所でもあることなのだろうが、横島は懐に入れた者に対して甘過ぎると近右衛門は見ていた。
ただ横島の若さで欠点の一つや二つあることは、逆に周囲に安堵感を与える原因にもなっているが。
何はともあれ賑やかな夕食はしばらく続いていった。
近右衛門も店に度々訪れる常連だったが、基本的には来店時間が朝か夜遅いため店で木乃香に会うことはほとんどない。
この日は仕事の関係で早めに夕食にするらしく、たまたま早く店に来たことで一緒に食べれることになったようだ。
「やはり夕食は大人数で食べる方が美味いのう」
古い洋風建築の店内は夜になると照明の影響もあって独特の赴きがあったが、この日は鶏肉のソテーやかぼちゃの煮物などごくごく普通の夕食である。
基本的に夕食は余った食材を使うことが多く、この日は大量にあるかぼちゃも使っていた。
そんな夕食を楽しげにおしゃべりしながら食べる木乃香や明日菜やさよなどを見て、近右衛門は思わず嬉しそうな笑みをこぼす。
この平和で楽しい食卓を守るのに、彼がどれほど苦労を重ねたか少女達は知らない。
しかし守るモノがあるからこそ、近右衛門は今も走り続けているのだ。
「おじいちゃんも横島さんも、飲み過ぎはあかんえ」
テーブルには何種類もの料理が大皿に並んでおり個々で好きに取って食べるのだが、木乃香はみんなに取り分けてあげたり横島や近右衛門のお酒を注意したりと忙しい。
特に横島は普段から夕食時に軽く晩酌するが、最近は木乃香達が健康を気にし始めてしまい週に二日は休肝日にされている。
ちなみに木乃香達の前では吸わないタバコについても、止めるように再三言われていた。
「だんだん無くなった妻や娘に似て来たわい」
「そうなんっすか?」
「うむ、逆らうと後が怖いんじゃ」
ニコニコと笑顔でお酒を注意する木乃香の姿に、近右衛門は亡き妻や京都の娘を思い出すらしく苦笑いを浮かべている。
そんな近右衛門の言葉には横島のみならず明日菜や夕映達も興味をそそられるが、ニコニコとした笑顔と裏腹に逆らうと後が怖いらしい。
近右衛門の妻や娘は基本的に昔かたぎの女性で男性を立てる良妻賢母のような女性のようだが、芯が強い一面もあるらしく引かないところは引かないようだった。
(そういや、最初バイトの話した時も……)
そんな近右衛門の話も木乃香本人はニコニコと聞き流しているが、横島は木乃香と出会ってからのことを思い出すとなんとなく納得する。
一見すると優しく流されやすいようにも見える木乃香だが、実際には芯が強く決して安易に流されるタイプではない。
まあ我が強いというほど絶対に流されない訳ではないが、以外と要所を抑えてることは横島も理解していた。
実は元々横島という人物は人に流されやすい性格だけに、木乃香達に流された結果が現状とも言える。
「まあ、そのうち君も分かるじゃろうて」
少しの間考え込む横島だったが、近右衛門は意味深な笑顔を一瞬見せると小さな声でぽつりとつぶやく。
目の前の食卓を仕切っていたのは、間違いなく木乃香だった。
元々は横島が木乃香達に遠慮しない関係を望んだのだが、近右衛門は横島もそのうち自分の気持ちを理解するだろうと確信している。
横島と周りの少女達の複雑な関係がどうなるかは流石に近右衛門にも分からないが、現状でも横島が木乃香に上手く導かれているのは気付いていた。
本来横島が他者との深い関わりをあまり望まぬことにも気付いているし、それを木乃香達が上手く入り込んだことにも当然気付いていたのだ。
(懐に入れた者に少し甘過ぎるのは、彼の性分かのう)
それは横島の長所であり短所でもあることなのだろうが、横島は懐に入れた者に対して甘過ぎると近右衛門は見ていた。
ただ横島の若さで欠点の一つや二つあることは、逆に周囲に安堵感を与える原因にもなっているが。
何はともあれ賑やかな夕食はしばらく続いていった。