平和な日常~秋~2

そんなハロウィンウイーク期間中、横島の店は混雑していた。

何より子供達でも買えるかぼちゃのスイーツを日替わりで出していたので、持ち帰りだけでなく店で食べていく子供も多い。

特に飲み物とハロウィンウイーク限定の激安スイーツで百六十円になるセットは大人気だった。

加えて他店で貰ったお菓子も自由に食べていいと書いていたことが、多くの子供達が集まった原因だろう。

正直利益という点では一切出てなく手間や仕事ばかり増えてはいたが、木乃香達が文句一つ言わずに協力的だったことが成功の鍵になっている。


「今日もよく売れたなぁ」

この日はハロウィンウイークの中日だった。

横島はレジを清算してメニューの売れ行きを確認するが、ハロウィンウイークに入って以来売り上げは伸び続けている。

ハロウィンウイーク限定の日替わりスイーツは当然よく売れていたが、木乃香のスイーツもハロウィンウイークに入ると再び売れ行きが伸び始めていた。

こちらは提供店を増やして一時期落ち着いてはいたのだが、小学生を中心に頼む子供が結構多いのだ。

むろん木乃香のスイーツも味や品質を考えれば高くはないが、提供店を増やした影響で簡単に値下げ出来ずにはっきり言うと小学生が気軽に食べれる値段ではない。

しかし食べる客がそれなりに居るということは、それだけ体育祭の影響力が大きいということだろう。


「ほう、美味そうじゃのう。 ワシも混ぜてくれんか?」

「おじいちゃんもご飯まだなん?」

時間は十九時を過ぎた頃になると店を閉めて木乃香達と夕食にしようとした横島だったが、ちょうどよく近右衛門がやって来る。

相変わらず夕食を横島の店で食べる機会が多い木乃香達だが、夕映とのどかの同室のハルナも当然ほぼ毎日夕食には来るし美砂達やあやか達に刀子など、2-Aのクラスの少女達が食べに来ることも多い。

ちなみに夕食は基本的に横島が作るが、最近は横島に習いながら木乃香が作る機会も増えていた。


「うむ、このあともう一仕事あるでな」

「身体大丈夫なん? 無理したらあかんえ」

この日も夕食は木乃香が作っているらしく近右衛門の声を聞き厨房から現れるが、まだ仕事が残っていると告げる近右衛門に心配そうな表情を見せる。


「大丈夫じゃよ。 まだまだ若いもんには負けんわい」

「ほんまに大丈夫なん?」

心配そうな木乃香に対し近右衛門は飄々とした表情で余裕で大丈夫だと言い切るが、木乃香は半信半疑だった。

基本的に近右衛門は孫娘に対して疲れた表情を見せることは全くないのだから、イマイチ信用してないらしい。


(肉体的な疲労ってよりは精神的な疲労だな。 少しメニューを変えるか)

一方横島は木乃香と近右衛門の会話を聞きつつ夕食の支度を続けるが、近右衛門の疲労は精神的な疲労だと感じていた。

ただ疲労の具合はさほど深刻な訳ではなく、多少精神的な疲労が溜まってる程度だろう。

孫娘と一緒に夕食を食べれば元気になるだろうし、横島はほんの少しだけ近右衛門の疲労が回復するように普通の範囲で手を加えるだけで十分だった。


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