十月も残り一週間になると麻帆良の街では、いよいよハロウィンウイークが始まろうとしていた。

この期間麻帆良市内の商店の店頭にはハロウィンウイーク参加店のポスターが掲示されており、プラスチック製だがジャックランタンの置物が飾られる。

ちなみにハロウィンウイークは基本的に商店街のイベントだが、普通の個人で参加してお菓子を子供達に配る家も僅かだが存在する。

子供達はポスターとジャックランタンの置物を目印に回って歩くのだ。

麻帆良には幾つかの商店街があり店も多いが、中にはタコ焼きやフランクフルトなんかを焼いて配る店なんかも存在した。

まるで縁日の出店のメニューのようだが、実際縁日にあるような食べ物は数は少ないが探せば必ずある。

他には子供向けにヒーローショーやゲーム大会なんてイベントも行われていた。

最早ハロウィンとは関係ないイベントやサービスも多いが、麻帆良では割とよくあることらしく気にする者はいない。



「おっきいね！」

そんなこの日の朝、横島とタマモの二人は朝の仕入れに出掛けていたが、途中で世界樹前広場に置かれていた巨大なジャックランタンを見つけて見物していた。

タマモの身長より大きなかぼちゃがくり抜かれ、見事なジャックランタンになっている。

そのあまりの大きさにタマモは興味津々な様子で、中を覗き込んだり周りを走ったりしていた。


「本当はうちでもこのくらいの作ろうかと思ったんだけどな～」

流石に周りを柵で囲っており触れないが、タマモはクンクンと匂いを嗅いでは不思議そうに見つめている。

横島はそんなタマモに思わず店でも巨大なジャックランタンを作りたかったとこぼすが、実は夕映達に反対されて諦めていた。

ここのような公園や野外ならいいが、はっきり言えば店内に巨大なジャックランタンを置かれても邪魔なのだ。

結局横島は店頭に飾るジャックランタンを作ったが、普通のかぼちゃのサイズを一回り大きくした程度の物に抑えている。

物には限度があると反対した夕映達の意見は正しいだろう。

タマモだけはちょっと残念そうだったが。


「さあ、仕入れして帰ろうか」

「うん」

ハロウィンウイークのイベント用の巨大なジャックランタンを見物した横島達はそのまま仕入れをして店に戻ることになるが、タマモはハロウィンの飾り付けが溢れる街を楽しげに見つめていた。



その後この日もいつもと同じように店を開店するが、お菓子を配る小学生や幼児は午前中には来ないので日中はいつもと同じだった。

相変わらず木乃香の大会スイーツが良く売れるが、ベジスイーツのランチも主婦層を中心に人気である。


「はい、タマちゃんお菓子あげる」

そしてタマモは何故か常連からお菓子を貰っていた。

普通は子供が貰いに行くのだがタマモの場合は日頃からばらいてるお土産の影響からか、よくお土産やお菓子を客に貰うがこの日はハロウィンウイークだからとお菓子をわざわざ持って来てくれる人が何人かいる。