それから数日が過ぎてハロウィンウィークの詳細が決まるが、横島の店ではハロウィンウィークの期間中は値引きと学生相手には先着五百名に小さなお菓子を配ることで落ち着く。

これに関しては他のケーキ屋や喫茶店に合わせた形であり、特に目立つ訳でもないが不足な訳でもない。

ハロウィンと言えば仮装して来た子供にお菓子をあげることが一般的に有名だが、麻帆良の場合はある程度制限をつけないとキリが無かった。

加えて子供達には普段は行かないような店にも行ってほしいということで、配るお菓子の数は参加店で一律五百個と決まっている。

お菓子の中身に関して一つ百円までにすることと決まっており、中身に大きな差が出ないようにも気配りされていた。


そしてハロウィンウィークの数日前になると麻帆良市内のお店では、ハロウィンの飾り付けをして街は一気にハロウィン一色になる。

横島の店がある場所は通りに幾つか店があるものの本格的な商店街ではないためあまり変わらないが、麻帆良の主要な商店街では街灯にジャックランタンの飾り付けをするなどかなり本格的であった。

期間中は商店街らしい福引きもあるし、大学部のサークルなどの協力によるイベントなんかも多数やるらしい。



「いたずらはだめなんだよ」

一方横島の店も木乃香達が中心となり多少だがハロウィンの飾り付けをしたのだが、タマモはハロウィンをイマイチ理解出来ないらしく悪戯はダメなのにと不思議そうだった。

【トリック・オア・トリート≠ご馳走をくれないと悪戯するよ】という言葉でお菓子を貰えるお祭りなんだということはタマモも理解したが、実際タマモの場合は普段から店でも散歩中でもよくお菓子を貰えるのでさほど珍しいことではない。

というかいつもお菓子を貰うのに、お礼やお返しではなく悪戯すると言うのはタマモ的には言ってはいけないという印象のようである。


「みんなで仮装して楽しむお祭りなんや」

「言葉に深い意味はないのよ」

何となく納得がいかない様子のタマモに、木乃香達は深く考えなくていいからと笑って言い聞かせていく。

誰の影響かは分からないが、タマモは人一倍優しく他人を思いやれる子供に成長している。

ただ逆にタマモにはいい子過ぎることを心配する人も多い。

あの明日菜でさえ、もっとワガママを言っていいと言うくらいなのだからよほどなのだろう。


「わかった！　わたしもみんなといっしょにおかしをあげるんだね！」

「えっ！？」

木乃香達にハロウィンを教わったタマモはわかったと言うと、自信満々の表情でお菓子をあげる側に回ればいいんだと誰もが予想もしないことを言い出す。

そんな正解からズレた解答にたどり着いたタマモの答えに木乃香達はポカーンとしてしまうが、タマモとしてはお菓子を貰うよりは横島や木乃香達と一緒にお菓子をあげる側に参加したいらしい。

正直日頃からお菓子を良く貰うだけに、タマモとすれば貰うよりあげる方が珍しく楽しいのだ。

しかも何故か日頃お菓子をくれる人達にお返しするんだと張り切るタマモに、木乃香達は少し困ったような笑顔で顔を見合わせたがタマモが楽しいならそれもいいかと考えていく。