平和な日常~秋~2

その後会議は悪質な業者への対応を保留して、提供店の広報活動と提供店拡大に関する条件なんかに話が移行していく。

きっかけは夕映の現実的な意見だったが、実際問題として正式な提供店の大規模な広報活動はあまりされてないのが実態だったのだ。

雪広グループではそれなりに広報活動をやっていたが、超包子は基本的に宣伝等はしてないし横島に至ってはメニューにすら載せてない。


「宣伝するならうちはメニューに載せなきゃダメか」

「横島さんが開発者なのはそこそこ知られてますわ。 その辺りもそろそろはっきりさせた方がいいと思います」

麻帆良カレー実行委員会として広報活動をすることが規定路線になると、一番問題になるのは横島である。

店のメニューに麻帆良カレーを載せることは当然として、開発者の問題に関してもそろそろ隠す意味が無くなっていた。

あやかはそれとなく横島に隠すのを止めてはと言うが、実は雪広グループや学園側の関係者からは真実が知られてる以上は開発者をはっきりさせた方がいいとの意見が出始めている。


「俺、これ以上目立ちたくないんだけど……」

「マスコミ等の対応はこちらでします。 ただ基本的な情報は、はっきりさせたいだけですので」

開発者をはっきりさせたいと言うあやかの言葉に横島は渋ると、関係者の表情には緊張が走った。

開発者の横島にヘソを曲げられては今後の展開に支障が出るのは明らかであり、あやかがこの件を持ち出したのも関係者に頼まれたからに他ならない。

横島が素直に店の拡大や繁盛を考える人間ならば簡単なのだが、カレーなどの利権を早々に放棄したような横島の扱いに周りはかなり慎重になっていた。


「どのみちここまで広がった情報を隠すのは不可能ですよ。 細かいことはプロに任せるのが一番だと思うです」

「……わかったよ。 任せるか」

結局夕映があやかの後押しをするようにプロに任せるべきだと言うと横島は軽くため息をつき任せると告げる。

そんな横島の言葉に関係者はホッとしたように話を進めるが、横島としては本意ではないがここで拒否しても意味がないのだから仕方ないと言った感じだ。

そのまま話は進むがこの日決まったのは現在の麻帆良カレー実行委員会を常設化することと、実行委員会において正式な提供店の広報活動を始めることである。

実行委員会名義でポスターを制作して提供店や観光施設や駅などに掲示することも同時に決まった。

なお提供店の拡大に関しては条件面などの詰めが必要なこととから、今後も話し合いを継続することになる。

将来的には提供店においてイベントや共通サービスをしたいとの意見なども出るが、現状では実行委員会と提供店を周知させる為の広報活動が最優先であった。

最後に次回の会議の日時を二週間後に決めたことでこの日は解散となる。


「なんか、話が大きくなったな~」

「横島さんが丸投げした結果だと思うです」

会議も終わり帰路につく横島達だったが、横島は勝手に進んでいく事態に少し首を傾げていた。

ただ夕映はそんな横島に考えもなしに丸投げした結果だと遠慮なくツッコミを入れる。

木乃香や超達はそんな夕映の言葉に笑っているが、横島としては仕方なかったと言わんばかりの笑顔しか出来なかった。


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