平和な日常~秋~2

一方横島達が参加する会議は順調に進んでいた。

元々この会議をする前に雪広グループと麻帆良学園は担当者が事前協議を続けていたのだ。

横島や超は直接関わってないがあやかを通して情報は聞いており、大筋での方向性などは合意している。

基本的に麻帆良カレーはご当地グルメとして広めていく方向性は変わらず、味の質を維持する為にどうするかが主な議題であった。


「正式な麻帆良カレー提供店を明確化することと、提供店を拡大することは必要でしょう。 普及型のスパイスやレシピの提供店への公開も致し方ないと思われます」

事前協議では正式な提供店を他店と差別化することと、提供店を増やすことは大筋で合意している。

今のところは横島の店に雪広グループ・超包子・学園の食堂棟などでしか正式な物は提供してないが、学園や雪広グループとしては一般の飲食店にも配慮せざるおえない。

なお現在麻帆良カレーのスパイスとレシピは、横島のオリジナルを基本に雪広グループの普及型に超包子のアレンジ型が存在する。

超包子のアレンジ型は横島は全く関わってないが、雪広グループの普及型はレトルトやファミレスなどで販売する際に横島も関わりスパイスとレシピを改良した物だった。

元々麻帆良カレーは大量生産を前提にしてなかったので、大量生産して販売するには細かな改良が必要不可欠だったのだ。

正式に提供店に加盟する店には普及型スパイスの販売とレシピの伝授は避けられないとの認識が大勢である。

おそらく麻帆良市内の飲食店ならばそれで大半を管理出来るが、問題は面倒なことを嫌い名前だけ使う悪質な飲食店が多少なりとも存在することだろう。

他にも麻帆良市外には悪質な業者なんかが出始めるのは時間の問題だと見られていた。


「加えて提供店の拡大に関しては味の質を管理するために定期的な調査は必要だと思われます。 ただ悪質な飲食店や業者に対する対応に関しては現時点で定まってません」

結局協力的な者には手を差し延べて一緒にやっていくことが一番だが、難しいのは悪質な飲食店や業者への対応だった。

商標権などを登録すれば法的な措置も可能だが、法的な措置を取るにしても金や人員は必要になる。

それに相手が麻帆良市内ならばまだ学園側も居るので対応の余地はあるが、麻帆良市外ならば更に対応が難しくなることも問題であった。


「あの……、悪質な飲食店には相手にしない方がいいのでは? 提供店さえ明確にすれば悪質な飲食店はさほど儲からなくなると思うです。 下手に対応すれば付け上がるだけのような気もしますし……」

非協力的な者達への対応には一概に結論が出ないまま会議は難航の兆しを見せるが、そんな中でずっと無言だった夕映が遠慮がちに意見を言うと大人達の議論が止まる。

実は事前協議でも同じような意見が出ており、相手にするだけ労力と金の無駄だという意見は多かった。

ただ理想としては、せめて麻帆良市内からは悪質な飲食店は早急に無くしたいのが本音なのだ。

正直横島側の人数合わせとして参加した名前も知らぬ中学生が、現実的でまともな意見を言うことに大人達は少し驚いていた。


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