横島が店を休んで会議に参加してる頃、タマモはビッケとクッキや数匹の野良猫達と一緒にエヴァの家を訪ねていた。


「いっしょにおさんぽいこう！」

この日タマモがエヴァの家を訪れた理由は、チャチャゼロを散歩に誘うためである。

以前エヴァの別荘で食事をした際に、チャチャゼロが外だと自由に歩けないとこぼしていたのをタマモは覚えていたのだ。

横島の家からエヴァ宅までは徒歩十分ほどで意外と近かったこともあり、タマモは一緒に散歩に行きたいと思ったらしい。


「仕方ネエナ。　タマニハ子守シテヤルカ」

ニコニコとした笑顔で散歩に誘うタマモに、チャチャゼロは少しめんどくさいといいたげな口調だったがいかないとは言わなかった。

エヴァは呪いの研究もあり魔法球の中に居ることが多く、彼女はぶっちゃけ暇なのだ。


「いってきます」

相変わらず口が悪いチャチャゼロはタマモに抱えられると抱き方が悪いなどと文句を付けるが、タマモは気にする様子もなく茶々丸に挨拶をして散歩に出発する。

エヴァ宅を出ると青々とした自然の緑が心地好く、タマモや猫達は嬉しそうだ。

ちなみにエヴァの住む家は学園の所有の物件であり、二十年前まではメガロ系の魔法使いが住んでいた邸宅があった場所である。

家の周囲が森に囲まれてる理由は、元々そこに住んでいたメガロ系の魔法使い達が周りの家と関わりたくないが故に森を残したまま小さな屋敷を立てて住んでいたのが理由らしい。

第二次大戦後には麻帆良の街も開発が進み街を包む結界の外ならばともかく、結界の中で本来の自然が残る環境は珍しく現在は地元の人の散歩コースになっていた。

なお現在エヴァが住んでる家はエヴァが麻帆良に括られてから近右衛門がエヴァの要望を聞き建てた家である。


「あら、タマちゃんお散歩？」

「うん、みんなでおさんぽしてるの」

さてエヴァ宅を出たタマモ達は、周りの森を抜けると麻帆良の街をあてもなく散歩していく。

相変わらずタマモが散歩するとよく声をかけられるが、幸いなことに子供のタマモが人形であるチャチャゼロを持っていても誰も違和感を抱かない。


「オ前モ、妹ト同類カ？」

周りに人が居れば喋らないチャチャゼロだったが、周りから人の姿が消えると話を始める。

猫に囲まれて道行く人によく声をかけられるタマモの姿に、チャチャゼロは茶々丸とそっくりだと口にした。

タマモは意味が分からずキョトンとするが、最近のタマモは街の人気者である茶々丸に匹敵するほどご近所ではよく声をかけられるのだ。

チャチャゼロはたまに茶々丸の外出に着いていくらしいが、周りの人間の反応が茶々丸の時と一緒らしい。


「みんなともだちなんだよ」

「オ前、幸セダナ」

人ならざる者でありながら何の疑いもなく人を信じるタマモに、チャチャゼロは言葉少なく返すしか出来なかった。

現実の厳しさを知らないと言えばそれまでだが、それをチャチャゼロ自身が指摘つもりはない。

チャチャゼロから見るとタマモは赤子そのものなのだ。

冗談が通じないほど純粋なタマモにはさすがのチャチャゼロも言葉を選ぶようである。