平和な日常~秋~2
その後時間を過ぎるに従って天気は悪化していく。
庭の台風対策が終わる頃には雨がぽつぽつと降りだしてしまい、帰宅を急ぐ学生や社会人が店の前を足早に通り過ぎて行っている。
「木乃香ちゃん達もそろそろ帰っていいぞ。 今日は店も早じまいするしな」
「そやな~ ウチらも帰ろうか」
予報より少し早い雨だったが、この先雨がやむことはあまり期待出来なかった。
今ならまだ風もなく傘をさして帰れるので、木乃香達はいつもより早く帰ることにする。
店には時折帰宅ついでにスイーツを買い求めに客は来るが、流石にこの日は店でゆっくりする客は少ない。
連日テスト勉強で賑やかだった店内だが、この日は別世界のように静かな店内に戻っていた。
「今日は二階で夕食にしようか?」
木乃香達が帰った後、横島はスイーツがある程度売り切れると店じまいにする。
店には貸し出し用の傘もいくつか置いてあるが、傘を持ってない常連の少女達が借りて行ったため無くなっていた。
日が暮れると少し風が出始めてさよが怖がり出したので、横島は簡単な後片付けを済ませるとさよとタマモと二階に移動する。
「私、ずっと一人だったので台風とか怖いんです。 特に夜の台風は真っ暗な世界に台風の強い雨と風で窓がガタガタ揺れて……」
二階に上がると横島はさっそく夕食の支度を始めるが、さよは怖いらしく横島の側を離れないしタマモも先程からさよを心配するようにさよと手を繋いだまま離さない。
キッチンの窓から街の明かりと降り続く雨を見てるさよの姿は、らしくないほど元気が無かった。
「みんないっしょだからだいじょうぶだよ」
幽霊として数十年、楽しい時も悲しい時も一人で過ごして来たさよはずっと一人で耐えて来たのだろう。
夜のファミレスやコンビニに行っていたのも彼女なりの精一杯の努力なのだ。
そんなさよにとって自然の猛威は恐怖の対象だった。
今は楽しく幸せな毎日だけに、余計に一人ぼっちだった頃を思い出す台風は怖いのかもしれない。
タマモは不安そうなさよに自信に満ちた表情で大丈夫だと言い切り胸を張る。
「今日は朝までみんな同じ部屋で居ようか。 たまにはそんな日があってもいいだろ」
さよを思いやるタマモの姿に、横島は自分達が本当に家族のようになったのだなとしみじみと感じる。
生まれた時代も世界も違う自分達だが、だからこそこうして助けあって生きて行ける幸せを横島は感じずにはいられない。
今夜はみんなで温かい鍋でも食べて同じ部屋で眠ればいい。
まあさよは幽霊なので睡眠は必要ないが、一緒にいるだけでも変わるだろうと横島は思っている。
「俺がさ昔住んでたアパートなんて、ぼろだったから台風が来たら家が揺れて凄かったぞ。 それに比べたらこの家は丈夫だから安心だよ」
不安そうなさよの気を紛らわすように横島は少し昔の話を始めた。
懐かしいアパートを思い出しさよが台風の恐怖を忘れるように、面白可笑しく多少脚色しながら高校時代の話をしていった。
庭の台風対策が終わる頃には雨がぽつぽつと降りだしてしまい、帰宅を急ぐ学生や社会人が店の前を足早に通り過ぎて行っている。
「木乃香ちゃん達もそろそろ帰っていいぞ。 今日は店も早じまいするしな」
「そやな~ ウチらも帰ろうか」
予報より少し早い雨だったが、この先雨がやむことはあまり期待出来なかった。
今ならまだ風もなく傘をさして帰れるので、木乃香達はいつもより早く帰ることにする。
店には時折帰宅ついでにスイーツを買い求めに客は来るが、流石にこの日は店でゆっくりする客は少ない。
連日テスト勉強で賑やかだった店内だが、この日は別世界のように静かな店内に戻っていた。
「今日は二階で夕食にしようか?」
木乃香達が帰った後、横島はスイーツがある程度売り切れると店じまいにする。
店には貸し出し用の傘もいくつか置いてあるが、傘を持ってない常連の少女達が借りて行ったため無くなっていた。
日が暮れると少し風が出始めてさよが怖がり出したので、横島は簡単な後片付けを済ませるとさよとタマモと二階に移動する。
「私、ずっと一人だったので台風とか怖いんです。 特に夜の台風は真っ暗な世界に台風の強い雨と風で窓がガタガタ揺れて……」
二階に上がると横島はさっそく夕食の支度を始めるが、さよは怖いらしく横島の側を離れないしタマモも先程からさよを心配するようにさよと手を繋いだまま離さない。
キッチンの窓から街の明かりと降り続く雨を見てるさよの姿は、らしくないほど元気が無かった。
「みんないっしょだからだいじょうぶだよ」
幽霊として数十年、楽しい時も悲しい時も一人で過ごして来たさよはずっと一人で耐えて来たのだろう。
夜のファミレスやコンビニに行っていたのも彼女なりの精一杯の努力なのだ。
そんなさよにとって自然の猛威は恐怖の対象だった。
今は楽しく幸せな毎日だけに、余計に一人ぼっちだった頃を思い出す台風は怖いのかもしれない。
タマモは不安そうなさよに自信に満ちた表情で大丈夫だと言い切り胸を張る。
「今日は朝までみんな同じ部屋で居ようか。 たまにはそんな日があってもいいだろ」
さよを思いやるタマモの姿に、横島は自分達が本当に家族のようになったのだなとしみじみと感じる。
生まれた時代も世界も違う自分達だが、だからこそこうして助けあって生きて行ける幸せを横島は感じずにはいられない。
今夜はみんなで温かい鍋でも食べて同じ部屋で眠ればいい。
まあさよは幽霊なので睡眠は必要ないが、一緒にいるだけでも変わるだろうと横島は思っている。
「俺がさ昔住んでたアパートなんて、ぼろだったから台風が来たら家が揺れて凄かったぞ。 それに比べたらこの家は丈夫だから安心だよ」
不安そうなさよの気を紛らわすように横島は少し昔の話を始めた。
懐かしいアパートを思い出しさよが台風の恐怖を忘れるように、面白可笑しく多少脚色しながら高校時代の話をしていった。