平和な日常~秋~2

「始めるか」

食材の確認を終えた横島はさっそく調理を開始するが、今回は完全に和食なので出汁を取り米を研ぐことから始める。

メニューに関してはせっかくの松茸なのでシンプルに王道のメニューにするらしい。

ちなみに松茸は異空間アジトから持って来た最高級品だった。

正直横島は買うべきか少し迷ったが、国産最高級松茸の値段を見たら買うのを止めたようである。

どのみちエヴァならば出所を追求しないだろうとの読みもあったし、タマモやさよにもたくさん食べさせたいと考えると異空間アジトから持って来た方が楽だと判断したようだ。


「そう、なかなか上手いじゃんか。 鱧の骨切りなんて出来る奴なかなか居ないぞ」

調理を開始した横島だったが、ついでに助手として手伝っていた茶々丸に鱧の骨切りを教えていた。

今回は松茸と相性がいい秋鱧も用意していたのだが、茶々丸に頼まれて鱧の調理法を伝授している。

通常は教えたからと言って早々出来る物ではないが、茶々丸の場合は技術をコピーしてるような物でありすぐに習得してしまう。

尤も麻帆良祭の時もそうだったが、味見が出来ないことと細かな応用が出来ない弱点は相変わらずあるものの技術は横島のコピーなので非常に高かった。

これが料理人として見るならば致命的な弱点になるが、家庭料理ならば当然問題はない。

まあ茶々丸の場合はエヴァに振る舞う為に鱧を勉強してる訳だし。



「出来たぞ。 後は目の前で調理するから一応完成だな」

その後も横島は茶々丸に松茸料理を教えながら調理を続けるが、松茸ご飯と土瓶蒸しなどの料理が幾つか完成すると茶々丸の姉である人形達が料理や食材を食卓へ運ぶ。

ちなみに茶々丸の姉達に関してはチャチャゼロのように魂がある訳ではなく魔法により仮初めの命であり、タマモは不思議そうにクンクンと匂いを嗅いでいたが。

どうやらタマモは本能的に魂がある存在を感じるらしいが、魂も感じないのに動く茶々丸の姉達は不思議な存在だと感じたらしい。


「うわ~、すごい眺めですね」

料理や食材が運ばれたのは、壁がくり抜かれたように大きく開いていた広い部屋だった。

一面に広がる海に月の優しい光が差し込むその景色は、さよやタマモにとっては驚きを通り越して驚愕だったようだ。

真っ白い壁にはロウソクの形をした照明が輝いているが、これもマジックアイテムらしい。

本当にどこかの城のような建物だが、唯一違うのは最低限以外はインテリアらしき物がまるでないことだろう。

気品溢れる中にもどこか寂しく感じるほど広い別荘は、まるでエヴァそのもののようだと横島は感じる。


「思ったより早かったな」

「まあな、時間かかるのは松茸ご飯くらいだったからさ。 焼き物と天ぷらは目の前で調理するから座ってくれ」

茶々丸と姉達が料理や食材を運び終えるとエヴァが現れるが、いつもよりは機嫌が良さそうだった。

テーブルの上には松茸ご飯や土瓶蒸しに旬の魚のおさしみなんかも置かれている。

そこは部屋もテーブルも食器も全て洋風であるにも関わらず、料理だけは純和風なのだが不思議と料理は違和感を感じないような統一感があった。

ただ食卓のテーブルの横には調理用のテーブルが置かれており、こちらは七輪や天ぷら鍋があるので流石に少し違和感があったが。


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