平和な日常~秋~2

「へ~、広いキッチンだな」

横島が案内されたのはキッチンと言うよりは本格的な厨房だった。

ただし電化製品の類は一切なく、代わりに見慣れない物がある厨房である。

全体的なインテリアは別荘の建物と同じだが、厨房の雰囲気はどちらかと言えばヨーロッパにも近い。


「細かいことは茶々丸に聞け。 私は少しやることがある」

厨房に入った横島達は見慣れない厨房を物珍しそうに見て歩くが、エヴァは後を茶々丸に任せるとその場を後にする。

元々この別荘は呪いの研究目的に使っているので研究に戻るらしい。


「これ冷蔵庫か?」

「それはマジックアイテムの冷蔵庫です。 この別荘にある物は全てマスターが魔法界で揃えた物なので」

エヴァが去ると横島は厨房の機器を確認するが、それは全て魔法世界のマジックアイテムであった。

冷蔵庫も見た目は高級な家具に見えるような物であり、横島も最初は食器でも入ってるのかと勘違いしたほどだ。


「へ~、初めて見たな」

「全てレアな超高級品です」

冷蔵庫には見えない見た目には横島だけでなくさよとタマモも驚くが、現在使ってる魔法球同様にレアなアイテムらしい。

そのまま物珍しい品々に目を奪われる横島だったが、まずは料理が先だと考えて調理の準備を始める。

食材は横島が持って来た物の他に茶々丸に用意を頼んだ物もあり結構な量になっていたことから、一通り確認が必要なのだ。


「この水は……」

そんな中で横島が止まったのは、別荘で使ってる水についてだった。

どうもこの別荘は水も魔法で作ってるらしく、良くも悪くも自然の水とは違っている。

どちらかと言えば純水に近い物だった。


「不都合ならば別の水を用意しますが」

「いや、大丈夫だよ。 ちょっと珍しかっただけだからさ」

水を口に含んだまま少し固まる横島に茶々丸は水を別に用意するかと尋ねるが、横島は必要ないと告げると確認を続ける。

正直初めての水ではあったが、使えないことはないし水道水なんかと比べると全然いい物だった。

特に今日は和食にするので水は重要であり、横島はミネラルウォーターの使用も考えていただけにいい意味で誤算だったらしい。


「エヴァンジェリンさんはお金持ちなんですね。 こんな広い別荘なんて初めて見ました」

「てれびでみたおしろみたいだね」

「オ前ラ、何モ知ラナインダナ」

一方厨房の中でキョロキョロと物珍しそうに見ていたさよとタマモは、初めて見る立派な建物やインテリアに楽しげであった。

そしてそんな何故か二人と一緒に居るチャチャゼロは、あまりにらしくない二人に素直に驚きつつも呆れている。

エヴァの正体を知らなければ魔法もしらない二人は、幽霊らしさも妖怪らしさも全くない。

何というか温室育ちのような、甘さや純粋さを感じたのかも知れない。

世間の厳しさも人間の闇も知らない二人は、チャチャゼロから見ると不思議な違和感がある存在だったようだ。


63/100ページ
スキ