平和な日常~秋~2

平日にしては忙しいこの日もお昼を過ぎると一応一段落する。

といってもスイーツを求める客が減る訳ではないが、朝のうちに完成させた分を販売するだけなので横島一人で対応可能だった。

そんな午後の時間にタマモはビッケとクッキと野良猫達と一緒に日課のお散歩にゆく。

一部ではまだ体育祭の後片付けをしていたが、麻帆良の街にはハロウィンの飾りなども現れて秋の彩りとなり始める。

タマモと八匹の猫達は、そんな変わりゆく町並みを眺めながら楽しげに歩いていた。


「おや、お散歩かい? 昨日はお店繁盛してたみたいだね」

「うん、おきゃくさんでいっぱいだった。 わたしもがんばったんだよ」

途中いつも寄り道する老人の庭で一休みするタマモと猫達の一行は、純和風の庭を眺めつつ老人の出してくれたお茶とおやつを味わう。


「これ、おみやげ。 おちゃといっしょがおいしいよ」

午後の日差しがちょうど老人の庭に差し込み、タマモが座っている縁側はぽかぽかして暖かかった。

お茶とおやつを食べ終えたタマモは、背負っていたリュックから和栗のショートケーキを老人にお土産として渡す。

実はこの和栗のショートケーキは、日頃ケーキをあまり食べない年配者などにも結構評判がいいのだ。

タマモにおやつをご馳走してくれる老人に横島がお土産として持たせたらしい。


「わざわざ、ありがとう」

「うん、またくるね!」

老人宅でおやつを食べながらしばし会話を楽しんだタマモは、再び散歩に戻っていく。

裏通りや建物と建物の隙間など、猫が通るような道を歩きながら街を散歩するのだ。

近所の人達には割と有名なタマモと猫達の散歩だが、見た目はタマモが猫達を引き連れて散歩してるように見えるが。

しかし実際にはタマモとビッケとクッキは、野良猫達に連れられてる立場であり立場が逆だった。

そもそも精神年齢が幼いタマモは猫達に守られてるような感じなのだ。


「こんにちは!」

「こんにちは。 タマモちゃんは今日も元気ね」

そのまま近所の小さな公園に到着したタマモと猫達の一行は、赤ちゃん連れのママさん達と挨拶する。

ベビーカーに乗ってる赤ちゃんにも挨拶して、抱っこしたり頭を撫でたりして楽しいひと時を過ごす。


「昨日お店混んでたわね~」

「本当にビックリしたわ。 流石にこの子連れて並べないし……」

「うん、きのうはすごかった。 でもきょうはぶんさんされたから、だいじょうぶなんだって」

赤ちゃんと遊びつつママさん達ともお話するタマモだが、この日の話題はやはり昨日の店の混雑だった。

欲しかったけど赤ちゃん連れだと並べないと困った表情をするママさん達に、タマモは意味を半分分かってないような口調で今日の話を教える。


「あら、そうなの。 じゃあ後で寄らせて貰うわね」

「うん!」

この日もしっかりとお客さんを増やしつつタマモは満足げな表情で散歩を終えて帰路につく。


「ただいま!」

元気よく店に戻ったタマモは常連の人達や横島に笑顔で迎えられると、今日のお散歩の様子を楽しげに報告することになる。



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