平和な日常~秋~2

さて横島の方の状況だったが、限定スイーツは朝の仕込みでなんとか完成させており後は売るだけだった。

流石に少々人手が足りなかったので異空間アジトから料理が得意なハニワ兵を三体ほど呼んで手伝ってもらっていたが。

販売に関しては午前中に各七十個販売して午後にも各七十個販売予定である。

残りの各六十個は元々店の常連は学生達用にと考え、放課後の時間から販売予定だった。

新規の客からは不満の声が出るかもしれないが、横島は開店当初からの常連である学生や近所の人達に配慮するつもりである。


「むずかしいね」

「当然だ。 簡単だとつまらん」

そんなこの日の店の客の入り具合については、いつもの平日の午前中の倍程度に収まっていた。

実はこの日の麻帆良スポーツでは一面に豪徳寺がクレーマーから喫茶店を守ったと大々的に載っていたが、同時に料理大会の関連記事も一面ではないが結構大きく載っている。

販売店舗や販売数なんかも紹介されており、横島が報道部にいち早く木乃香の委託先の情報を流したので客がある程度分散されたらしい。

従って横島一人でも対応出来るレベルだったが、いつものような暇な時間は結構減ってしまった。

この日は例によってエヴァが朝から来ていたが横島には囲碁をする時間がないので、エヴァは何故かタマモに囲碁を教え始めている。

いくらタマモが見た目にそぐわぬ学習能力があり賢いとしても、現時点での思考能力はさほど高い訳ではない。

一応囲碁のルールは理解しても長年経験を積んだエヴァの相手になるはずもないが、エヴァは割と楽しそうにタマモの相手をしていた。


「うち喫茶店なんだけどな~」

一方横島は日に日にスイーツの持ち帰り客が増える現状に頭を悩ませている。

正直あまり混雑すると大変なので、スイーツの持ち帰り販売を辞めようかとまで考えていた。


「自業自得だ。 後先考えないで好き勝手にやるお前が悪い」

持ち帰り客が途切れた隙に横島はエヴァとタマモの対戦の様子を見ながら愚痴るが、エヴァには一言で切り捨てられてしまう。


「そりゃ分かってるけどさ。 いっそ明日から駄菓子屋かマンガ喫茶にでも変えるか?」

元々自堕落な生活が好きな横島は、正直稼ぎたいとは思ってない。

昔のように生きる為に必要ならば働くが、現在は働かなくても生きていけるのだから。


「みんなけーきをたのしみにしてるんだよ」

自分の予想以上に忙しくなり始めてなんとか回避したいと後ろ向きに考える横島だったが、タマモに本当のことを言われると返す言葉がなかった。

タマモとしてはみんなが喜んでくれることは嬉しいしいいことなのだ。

スイーツの販売を辞めようかと悩む横島の気持ちが理解出来ないらしい。


「そのうち飽きて客の数が戻るまで我慢するか」

タマモの言葉に撃沈された横島は少し苦笑いを浮かべるが、どのみち和栗のショートケーキを売れるのは後一ヶ月がギリギリである。

冬になれば落ち着くだろうと楽観的に考えて深く考えないことにするらしい。



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