平和な日常~秋~2

さて横島達が今日の分として用意した木乃香のスイーツの材料は、和栗のショートケーキとりんごのロールケーキが各八百個分であった。

決勝の野菜のスイーツランチは、二百五十食分用意している。

販売個数に関してはかなり悩んだが、新堂の店は各千二百個販売する予定だとの噂を聞き各八百個に決めていた。

ちなみに超包子も今朝は早い時間から優勝記念セールと称して、路面電車型屋台全店がフル営業している。

今日は体育祭の振り替え休日なため、料理大会で話題になった者に関わる店はどこも混雑していた。


「和栗のショートケーキは約30分待ち、りんごのロールケーキは約40分待ちになってます」

朝食の時間が終わると食事関係のメニューを頼む客が減ったので厨房は少し楽になるが、木乃香のスイーツ目当ての客は益々増えている。

この頃になると販売スピードが製造スピードを越えてしまった為に、店の外には行列が出来始めていた。

フロア組の夕映や美砂達は、行列の整理やおおよその待ち時間を伝えるなど忙しく働いていく。


「そろそろ交代しながら休憩に入っていいぞ。 簡単な物だけど飯作ったから食ってくれ」

一方厨房では元々店にあった大型の古いオーブンと木乃香の大会の練習用に借りた小型の新しいオーブンを使ってケーキをフル回転で焼き続けていたが、焼き時間だけは横島でもどうしようもなかった。

茶々丸や美砂達のおかげで休憩に入る余裕はなんとかあるので、お昼が来る前に交代しながら休憩に入ることにする。


「やっぱ早いとこ販売委託した方がいいかもな」

「そうやな~。 平日はウチらバイト出来へんし……」

のどかを先に休憩させた横島と木乃香はケーキを作りながらも今後の話を始めていた。

恐らくは今日が一番混むのだろうが、当分は土日を中心に同じような混雑が予想されている。

平日は学生が来ないので幾分マシだろうが、それでも横島が一人で対応出来る範囲では収まらないのがほぼ確実だった。

昨日も少し話をしていたが、雪広グループにでも委託しようかと横島達は話していたのだ。


「あやかちゃんに電話しとくか」

結局横島は木乃香と相談して委託先を探す為にあやかに相談することに決める。

二人からすれば雪広グループで直接販売してもいいし、どこか知り合いに流すのでもどっちでも構わない。

実際横島の元には麻帆良祭のメニューに関する収入が雪広グループから入っており、そこそこの収入になっていた。

あやかなら手頃な委託先を探してくれると考え、またもや丸投げするようである。


「ところでこの醤油入れる容器に、ケーキのソースを入れるのどうかと思うわよ」

「すぐ手に入るやつそれしかなかったんだわ」

一方明日菜は小さな魚の形をしたお弁当によく入ってる醤油を入れる容器に、りんごのロールケーキにかけるソースを地道に入れていた。

イメージ的に醤油を入れる容器なので明日菜は微妙な表情をするが、他に手頃な容器がなかったのだ。

元々りんごのロールケーキは木乃香が販売をすることを考えなかったので、りんごの皮を使ったソースは持ち帰りの場合は別に容器に入れる作業が必要だったのである。

これがまた地道に手間がかかっていた。



45/100ページ
スキ