平和な日常~秋~2

「今日は忙しくなるぞ」

「わたしもてつだう!」

楽しかった体育祭も終った翌朝の麻帆良はいつもと同じ清々しい朝だった。

体育祭の打ち上げで朝まで騒いでいた者達も居たようだが、ほとんどが朝日と共に帰路についている。

横島とタマモは相変わらず夜明けと共に起きると、さよを加えた三人で庭の手入れと猫達のご飯を用意していく。


「最初は気まぐれだったんだけどな」

店の窓際の花壇にはコスモスが植えられており、ちょうど綺麗な花を咲かせ初めていた。

夏野菜の後に植えた野菜類はまだまだ収穫にはほど遠いが、こちらも順調に芽を出して育っている。

いつの間にか日課となった朝の仕事だが、横島達はこれが楽しみの一つになっているのだ。


「気まぐれですか?」

「まあな。 気まぐれで始めた庭いじりなんだよ」

猫達に囲まれ笑顔を見せるタマモを見守っていた横島とさよは、いつの間にか日課となったこの時間のことを話し始める。

すっかり家族のようになったさよも麻帆良祭前の横島のことはあまり知らなく、時々木乃香達から聞く程度だった。

正直横島の過去は聞けば聞くほど不思議だなと感じることも多い。


「本当は一人で静かに喫茶店やりながら、庭の手入れしたりしていくつもりだったんだけど」

いつの間にか賑やかになったなとシミジミと感じる横島の目の前では、これまた毎日やって来る茶々丸がタマモや猫達に囲まれ嬉しそうな笑顔を見せている。

いつまでもこんな時間が続けばいいと願わずには居られなかった。


「じゃあ俺は仕入れに行って来るから、後は頼むな。 雪広グループの食材が来たら冷蔵庫と地下に運んでおいてくれ」

「わかりました」

「いってらっしゃい!」

その後横島は留守をさよとタマモに任せて仕入れに向かう。

大量に必要な食材などはほとんど昨日のうちに雪広グループに頼んでおり、系列の配送車が店まで届けてくれるのだ。

雪広グループの場合はグループ内にグループ専用の配送会社もあり、麻帆良市内の雪広グループ系列の店などに配送する車が一緒に届けてくれていた。

夏休み以降は雪広グループに仕入れを頼む機会も増えたので、配送会社のドライバーとは横島達はすっかり顔なじみである。


「じゃあ、お掃除しましょうね」

「うん」

横島が居ない間にこの日のさよとタマモは店の周りや店内の掃除を始める。

店内は基本的に夜も掃除しているので軽くでいいが、朝の掃除はご近所さんと顔を合わすことも多くご近所さんもみんなやっていた。

そんな二人が掃除を終える頃には雪広グループの配送車が食材を運んで来たり、木乃香達が早々にバイトに来たりと賑やかになっていく。


「今日はいつもに増して量が多いですね」

「先に下ごしらえ始めよか」

大量の食材は流石にさよとタマモの二人では大変だが、ちょうど木乃香達が来たことで運ぶことが出来て、さっそく木乃香を中心に仕込みを開始することになる。



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