平和な日常~秋~2

料理大会が終わり横島達が会場を後にする頃には、すでに麻帆良の街は全体イベント開始間近となって盛り上がっていた。

今年の全体イベントは【スーパー借り物競争】と発表され、参加する生徒や教師や保護者はそれぞれに対策を話し合う。

小中高の各学校・学年・クラス・サークル単位での参加が可能なこの全体イベントは、体育祭全体の総合成績にも影響するらしい。


「そんじゃ一足先に乾杯するか」

一方横島とタマモは木乃香・夕映・のどかと一緒に、近場の屋台で飲み物を買って乾杯していた。

実は横島と木乃香達は全体イベントは不参加なのだ。

全体イベントは人数制限があり2-Aの参加枠の関係から、横島達は参加しないことになっている。


「この後どうしますか? 花火大会を見るなら場所取りをしないと……」

明日菜や運動が得意な面々はまだ全体イベントがあるが、横島達は一足先に打ち上げモードだった。

タマモは全体イベントに興味を示しつつも花火大会が楽しみなようで、夕映はいい場所で花火を見るならば場所取りをしないと厳しいと言いかけるが。

そんな時横島が花火大会の有料席のチケットの束を夕映達に見せる。


「そんなにたくさん、どうしたんですか?」

「芦コーポレーションに割り当てられた有料席の分だよ。 あそこまだ社員も少なくて余ってたから貰って来たんだ」

基本的に花火大会には有料席があることが多いが、麻帆良の花火大会でも同様で有料席が用意されていた。

麻帆良の花火大会では花火大会や体育祭の協賛企業に有料席が無料で配られるのだが、芦コーポレーションは社員も少なく本社機能がまだ東京なので参加者が少なく有料席が余っていたのだ。

横島も社員が見るなら貰うつもりはなかったが、余ってる以上は遠慮なく貰ったらしい。


「ああ、協賛企業の席でしたか。 今年の体育祭は芦コーポレーション協賛の特設サイトのおかげで、混乱が少なく盛り上がったと評判ですからね」

約四十枚の有料席チケットに驚く木乃香達だが、芦コーポレーションの協賛協賛席だと知ると納得していた。

実のところ今年の体育祭は芦コーポレーションと報道部が共同で運用した特設サイトの評判が非常によかったのだ。

以前の体育祭では各種情報の多さや伝達のスピードから混乱や間違いが多く、報道部や各種競技の運営や学園側はかなり大変だったらしい。

それでも数年前からはパソコンを使い関係者限定の情報伝達を始めて、だいぶマシにはなったらしいが。

今年からは芦コーポレーションの技術提供により更に進化した情報管理と伝達のノウハウと、携帯電話からの情報確認システムを提供した為に大会の様子がかなり様変わりしたと評判になってるらしい。


「そうなんだ~」

「知らなかったんですか?」

「細かいことは聞いたことないしな。 会社作る時に頼まれて金を出した記憶はあるが」

夕映は芦コーポレーションの協力内容を詳しく説明するが、どうやら横島はほとんど知らないらしく驚いている。

ただ夕映達はそんな横島が何気なく語った芦コーポレーションとの関係に驚いていたが。



38/100ページ
スキ