平和な日常~秋~2
二部門同時に同点優勝に加え、超鈴音の二連覇そして新堂美咲の大会史上初の三連覇で大会は大成功に終わる。
木乃香の決勝のスイーツに関しては疑問を感じる観客が居ない訳ではない。
準決勝と決勝を総合的に見ると、どう考えても新堂の実力が上なのは明らかだった。
しかし野菜という課題を最大限に生かして、現実的に食べる人のことを一番考えていたのは紛れもなく木乃香である。
最終的にそんな木乃香の順位に疑問を感じる観客を黙らせるのは、やはり大会終了後のインタビューを受けた新堂だった。
《確かにもう一度戦えば確実に勝てたかもしれない。 しかし私が近衛さんの立場だったら、同点優勝は絶対に無理だったと思います》
それは同点優勝について聞かれて彼女が答えた一言である。
中学生という年齢や経験の違いに初出場というハンデを背負う木乃香の結果を、誰よりも認めていたのは新堂だった。
そんな彼女のコメントにより木乃香の評価への疑問は静かに消えていく。
最後に大学生活ラストの大会で史上初の三連覇を成し遂げた彼女は、心残りはと尋ねられると木乃香と来年戦えないことが少し心残りだと言いインタビューは終わった。
ちなみに新堂美咲は麻帆良の料理関係者や大学生達からはパティシエ界のクイーンとの愛称で呼ばれることもあるが、彼女がクイーンと呼ばれるのは何もスイーツが最高だからではない。
その気高く気品溢れる生き方故に、そんな愛称で呼ばれている。
後輩や先輩問わず困ってる仲間には親身に技術指導することでも彼女は有名であり、彼女を慕う人間は同業者にも多い。
「おめでとう~!」
「タマちゃん、ウチ優勝しちゃった」
その後大会とインタビューが終わると木乃香は横島達と合流するが、真っ先に木乃香に抱き着いたのはやはりタマモだった。
緊張の糸が切れたのかタマモを抱きしめ少し涙ぐむ木乃香を、友人や父詠春は嬉しそうに見守っている。
「横島さん、貴方がパティシエじゃないって言った意味。 少しだけ理解出来ましたわ」
そして横島の元には何故か新堂が来ていた。
周囲には彼女の友人らしき大学生や高校生が多く、木乃香や2-Aの少女達などの中学生共々新堂と横島の言葉を固唾を呑んで見守っている。
何か特別な空気が新堂と横島の間にはあった。
「木乃香ちゃんはそれ以上に、新堂さんから多くを学ばせて貰きましたけどね」
「初出場の後輩だもの。 全力を出す手助けくらいは当然だと思うわ。 何より私が全力を出した近衛さんと戦いたかったんです」
街のあちこちからは体育祭の全体イベントを前に賑やかな声が聞こえるが、横島達の居る場所だけ不思議な緊張感が流れている。
初めて挨拶した時の横島は軽い調子でペコペコとしていたが、今日は何故かそんな気配はみじんもない。
「今度はお店に貴方の料理をいただきに参りますわ」
結局二人の会話はさほど長いものではなく挨拶程度だったが、終始なんとも言えない空気が残っていたのは確かだろう。
そして新堂が自分にはない何かを持つ横島に強い興味を抱いたことは確かである。
「とんでもない人だったな」
去りゆく新堂達を見つめた横島が思わず苦笑いをこぼしたのも仕方ないことだろう。
新堂はどこまでも強く優しく、そして貪欲だった。
どこか懐かしい感覚を感じつつも横島は木乃香の料理大会が終わり、ようやくホッと一息つくことが出来たのである。
木乃香の決勝のスイーツに関しては疑問を感じる観客が居ない訳ではない。
準決勝と決勝を総合的に見ると、どう考えても新堂の実力が上なのは明らかだった。
しかし野菜という課題を最大限に生かして、現実的に食べる人のことを一番考えていたのは紛れもなく木乃香である。
最終的にそんな木乃香の順位に疑問を感じる観客を黙らせるのは、やはり大会終了後のインタビューを受けた新堂だった。
《確かにもう一度戦えば確実に勝てたかもしれない。 しかし私が近衛さんの立場だったら、同点優勝は絶対に無理だったと思います》
それは同点優勝について聞かれて彼女が答えた一言である。
中学生という年齢や経験の違いに初出場というハンデを背負う木乃香の結果を、誰よりも認めていたのは新堂だった。
そんな彼女のコメントにより木乃香の評価への疑問は静かに消えていく。
最後に大学生活ラストの大会で史上初の三連覇を成し遂げた彼女は、心残りはと尋ねられると木乃香と来年戦えないことが少し心残りだと言いインタビューは終わった。
ちなみに新堂美咲は麻帆良の料理関係者や大学生達からはパティシエ界のクイーンとの愛称で呼ばれることもあるが、彼女がクイーンと呼ばれるのは何もスイーツが最高だからではない。
その気高く気品溢れる生き方故に、そんな愛称で呼ばれている。
後輩や先輩問わず困ってる仲間には親身に技術指導することでも彼女は有名であり、彼女を慕う人間は同業者にも多い。
「おめでとう~!」
「タマちゃん、ウチ優勝しちゃった」
その後大会とインタビューが終わると木乃香は横島達と合流するが、真っ先に木乃香に抱き着いたのはやはりタマモだった。
緊張の糸が切れたのかタマモを抱きしめ少し涙ぐむ木乃香を、友人や父詠春は嬉しそうに見守っている。
「横島さん、貴方がパティシエじゃないって言った意味。 少しだけ理解出来ましたわ」
そして横島の元には何故か新堂が来ていた。
周囲には彼女の友人らしき大学生や高校生が多く、木乃香や2-Aの少女達などの中学生共々新堂と横島の言葉を固唾を呑んで見守っている。
何か特別な空気が新堂と横島の間にはあった。
「木乃香ちゃんはそれ以上に、新堂さんから多くを学ばせて貰きましたけどね」
「初出場の後輩だもの。 全力を出す手助けくらいは当然だと思うわ。 何より私が全力を出した近衛さんと戦いたかったんです」
街のあちこちからは体育祭の全体イベントを前に賑やかな声が聞こえるが、横島達の居る場所だけ不思議な緊張感が流れている。
初めて挨拶した時の横島は軽い調子でペコペコとしていたが、今日は何故かそんな気配はみじんもない。
「今度はお店に貴方の料理をいただきに参りますわ」
結局二人の会話はさほど長いものではなく挨拶程度だったが、終始なんとも言えない空気が残っていたのは確かだろう。
そして新堂が自分にはない何かを持つ横島に強い興味を抱いたことは確かである。
「とんでもない人だったな」
去りゆく新堂達を見つめた横島が思わず苦笑いをこぼしたのも仕方ないことだろう。
新堂はどこまでも強く優しく、そして貪欲だった。
どこか懐かしい感覚を感じつつも横島は木乃香の料理大会が終わり、ようやくホッと一息つくことが出来たのである。