平和な日常~秋~2

競技が終わった夕映達はそのまま野球が終わった横島達と合流するが、横島が急遽野球大会に出場したと聞くと素直に驚いていた。


「野球の経験なんてあったんですね」

「小学校の頃とか遊びで少しやっただけだよ。 それに最近は行ってないけどバッティングセンターならたまに行ってたしな」

タマモや美砂達が目の前で見たホームランが凄かったと騒ぐので謎が多い横島の過去が気になる夕映はそれとなく尋ねるが、横島は相変わらず抽象的な話に終始する。

実際横島が目立ったのは最後のホームランだけであり、守備や他の打席はさほど目立った訳ではない。

大会MVPも中等部チームの主力選手だったし、あの試合で見ても横島よりも目立ってる者は何人かいた。

結果的にホームランはまぐれ当たりだと横島は周囲に語っていたが、周囲も当然まぐれだと思っているし狙って打ったと気付く者は刀子くらいであろう。

実際刀子は横島が少し目立ち過ぎかと思ったが、そもそも魔法協会に加わってない横島の行動を第三者が縛る法や決まりは魔法協会にもない。

流石に明確な意思を持って魔法を第三者にばらそうとするならば魔法協会としても対応せざる負えないが、多少身体能力を強化する程度ならば確認のしようがないのが現状である。

無論やり過ぎると魔法協会に所属してなくとも魔法協会の領域内ならば警告や捕らえて罰することもあるが、よほど悪質で無ければお説教程度で終わりだった。

明確なガイドラインがある訳ではないが、関東魔法協会では基本的に人間の限界を超えるようなことをしない限りは見逃している。

魔法使いも人の親であり人の子なのだから、ルールを厳しくするだけでは収まらないのが現実だった。


「横島さん達、来ないと思ったら野球に出てたのね」

「おうえんにいけなくてごめんなさい」

「いいの、いいの。 昨日来てくれたじゃない。 ちょっとビックリしただけよ」

そのまま陸上競技に参加していた明日菜も合流したが、タマモは応援にいけなかったと申し訳なさそうに謝る。

実は横島とタマモはミニ四駆大会の後は明日菜の応援に行く予定だったのだ。

夕映達同様に横島の野球大会出場に驚いた明日菜だが、元気いっぱいだったタマモが申し訳なさそうに落ち込むと慌てて宥めていた。


「あ~あ、アスナったらタマちゃんいじめちゃった」

「いじめてないよ。 おうえんにいけなくてざんねんなの」

落ち込むタマモと慌てる明日菜に美砂はすかさず明日菜をからかいにかかるが、タマモは明確に否定して明日菜に抱き着く。


「あのアスナに子供が懐くなんてね~」

抱き着いてきたタマモをそのまま抱えた明日菜は少し恥ずかしそうにしながらも、タマモが元気になり始めたのでホッとする。

タマモとしては明日菜に申し訳ないと落ち込んでしまったのだが、嫌われたくないとも考えたらしくちょっと不安だったようだ。


「タマちゃんとは仲良しだもんね」

「うん!」

タマモを抱き抱えた明日菜は桜子にまでからかわれるが、半ば開き直った明日菜が仲良しだと言い切るとタマモは嬉しそうに頷いていた。



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