平和な日常~秋~2

一方久しぶりの家族での夕食をしていた多くの少女達だったが、明日も体育祭があることもあってあまり遅くなる前に寮に戻っていく。

そして近右衛門の邸宅には娘達と食事を終えた、雪広・那波両夫妻と詠春が密かに集まっていた。


「雪広君も那波君も忙しいのにわざわざすまんな」

麻帆良にある近右衛門の邸宅は、近代的な洋風建築だった。

そこそこ広い庭もあり横島の借りてる店舗件住居よりも当然広く、実は一人暮らしの近右衛門自身は広すぎて逆に不便だと考えてるような家である。

しかし組織のトップとしての立場を考えると、流石にある程度はいい家に住まなければならないとの事情があり住んでる家だった。

なお地下には司令部としての機能があるシェルターまで完備されており、専用通路で関東魔法協会本部や外部への脱出が可能という見た目以上に高性能な邸宅である。

当然警備も二十四時間体制だし、各種防御魔法なんかも完備していた。


「構いませんよ。 学園長先生。 我々も現在の情勢には危機感を感じてます」

そんな近衛邸に集まった雪広夫妻と那波夫妻と詠春だが、当然近右衛門は彼らが幼い頃から知っており特別緊張感がある訳ではない。

近衛家・雪広家・那波家には正式な血縁関係こそないがこの三家は並の親戚以上に交流があり、昔から定期的に集まっては酒や食事を共にして情報交換や将来について話し合う会合を開いていた。

実は二十年前の関東魔法協会独立の話が最初に出たのも、この三家の話し合いの場であったりする。

元々二十年前までは近右衛門を個人的に支援する為の会合だったのだが、独立以降は麻帆良学園全体や関東魔法協会の支援の為の会合に変わっているが。

ちなみに参加メンバーも二十年前は近右衛門と同世代の雪広清十郎や那波千鶴子が主役だったが、彼らはいち早く世代交代をしたので最近はあやかや千鶴の両親が主役だった。

そして詠春に関しては近衛家の後継者件関西の代表として参加することもあるが、流石に参加回数はさほど多くはない。


「まさかあの組織が生き残っていたとはね。 フェイト・アーウェルンクスが生きてる以上は、最高幹部の誰かが生きてる可能性が高いか」

「それも問題ですが、フェイト・アーウェルンクス発見の情報提供元が今だにはっきりしないのも問題ですわ。 誰かに躍らされてたではすみません」

この場には三家の人間以外は誰もおらず、三家の人間は皆立場や地位に関係なく意見を出し合い互いに議論をしていく。

この日の主要なテーマはやはりフェイト発見からの情勢と、今後の対策であった。


「情報元がアルビレオ・イマでないのは確かと思います。 秘密主義なので油断は出来ませんが、アルには動機がない」

そんな話し合いが続くが、実は近右衛門達がフェイト情報提供元として疑っているのはアルビレオ・イマである。

悩筋が多い赤き翼の実質的な頭脳であり、ナギの為ならば何を企んでもおかしくないとの見方が近右衛門にはあった。

無論近右衛門もアルと敵対してる訳ではなくそれなりに協力関係にはあるが、正直近右衛門は彼を信じてない。

今回詠春がアルに会いに行ったのはアルと近右衛門を繋ぐ役割もあるが、同時に情報提供元かどうか確かめるためでもあった。

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