平和な日常~春~
「ご苦労さまっす。 よかったら一杯奢りますから、飲みませんか?」
時間が9時を過ぎた頃になると刀子はようやく仕事が終わったようで、パソコンを閉じて一息つく
そんな時すかさず横島が飲み物を勧めると、刀子はビールを頼む
「貴方はいつも楽しそうね」
何故か笑顔で嬉しそうにビールとつまみを出した横島に、刀子は思わずそんな事を呟いてしまう
これは別に嫌味ではなく、ただ単に横島を見た素直な感想である
教師と魔法使いの両立に苦労する刀子は、趣味で店をやってるような横島が少し羨ましく感じたようだ
「そうっすね、毎日楽しんでますよ」
人によっては嫌味にも聞こえそうな言葉にも笑顔で楽しんでると答える横島に、刀子は思わず吹き出して笑ってしまう
鈍感なのか気付かぬフリをしてるのか本心なのか刀子には分からないが、それはまるで子供のような答えなのだから
しかも横島が言うとよく似合う台詞だった
(お嬢さまが気に入るワケね)
今日で二回目の刀子だが、横島に感じたのは裏の世界とは無縁の平和な姿だった
それが本心か偽りかは分からないが、今は平凡な日常を好み楽しんでるのは確かだと感じる
元々神鳴流剣士である刀子は、様々な価値観がある麻帆良の魔法使い達の中でも一般人に近い価値観の持ち主だった
まして刀子は西洋魔法使いと結婚して失敗しただけに、裏の力を持つかもしれない横島が一般人として生きる現状に羨ましく感じるのは仕方ないだろう
(どんな過去があるのか知らないけど、上手く立ち回ったわね。 私も魔法協会辞めようかしら?)
いっそ自分も魔法協会を辞めて、横島みたいに自由気ままに生きようかと思わず悩み始める
近右衛門への義理で現在も魔法協会に所属してはいるが、刀子自身は今でも神鳴流に身を置く立場だしメガロメセンブリアに近い魔法使い達の価値観はあまり理解出来ない
現在は近右衛門がメガロメセンブリアから距離を開けているからいいが、刀子としては行った事もないメガロメセンブリアにこれ以上関わる気など全くなかった
「どうかしましたか?」
「なんでもないわ。 ただ毎日楽しんでるって言い切れる貴方が、少し羨ましかっただけよ」
突然無言になった刀子に横島は不思議そうに声をかけるが、刀子は僅かに苦笑いを浮かべて今は深く考えるのを止める
いろいろ思うところはあるのだが、それはもう少し時間をかけて考えるべきだと思ったのだ
「今の時間は二度と戻らないですからね。 俺は今を最大限楽しむようにしてるんっすよ」
僅かに迷いが見える刀子に、横島は余計かもしれないと理解しつつ一言語ってしまう
「えっ……!?」
その瞬間、何故か刀子には横島が別人のように見えた気がした
先程まで子供のように楽しそうに笑っていた横島が、まるで違う大人の表情に見えていたのだ
「喫茶店を始めたおかげで普段なら俺なんて相手にもしてくれないような美人さんと、こうやって一緒にお酒が飲めるんっすからね。 俺は楽しいっすよ」
「そんなに褒めても何も出ないわよ。 まあ、ただの客でいいならまた来てあげるけど……」
いつの間にかまた元の軽い調子の笑顔に戻っていた横島に、刀子は先程の表情は気のせいかと思う
そのまま刀子は横島のペースに引きずられるように会話を交わして、しばらく飲んだあとで帰ったようだ
時間が9時を過ぎた頃になると刀子はようやく仕事が終わったようで、パソコンを閉じて一息つく
そんな時すかさず横島が飲み物を勧めると、刀子はビールを頼む
「貴方はいつも楽しそうね」
何故か笑顔で嬉しそうにビールとつまみを出した横島に、刀子は思わずそんな事を呟いてしまう
これは別に嫌味ではなく、ただ単に横島を見た素直な感想である
教師と魔法使いの両立に苦労する刀子は、趣味で店をやってるような横島が少し羨ましく感じたようだ
「そうっすね、毎日楽しんでますよ」
人によっては嫌味にも聞こえそうな言葉にも笑顔で楽しんでると答える横島に、刀子は思わず吹き出して笑ってしまう
鈍感なのか気付かぬフリをしてるのか本心なのか刀子には分からないが、それはまるで子供のような答えなのだから
しかも横島が言うとよく似合う台詞だった
(お嬢さまが気に入るワケね)
今日で二回目の刀子だが、横島に感じたのは裏の世界とは無縁の平和な姿だった
それが本心か偽りかは分からないが、今は平凡な日常を好み楽しんでるのは確かだと感じる
元々神鳴流剣士である刀子は、様々な価値観がある麻帆良の魔法使い達の中でも一般人に近い価値観の持ち主だった
まして刀子は西洋魔法使いと結婚して失敗しただけに、裏の力を持つかもしれない横島が一般人として生きる現状に羨ましく感じるのは仕方ないだろう
(どんな過去があるのか知らないけど、上手く立ち回ったわね。 私も魔法協会辞めようかしら?)
いっそ自分も魔法協会を辞めて、横島みたいに自由気ままに生きようかと思わず悩み始める
近右衛門への義理で現在も魔法協会に所属してはいるが、刀子自身は今でも神鳴流に身を置く立場だしメガロメセンブリアに近い魔法使い達の価値観はあまり理解出来ない
現在は近右衛門がメガロメセンブリアから距離を開けているからいいが、刀子としては行った事もないメガロメセンブリアにこれ以上関わる気など全くなかった
「どうかしましたか?」
「なんでもないわ。 ただ毎日楽しんでるって言い切れる貴方が、少し羨ましかっただけよ」
突然無言になった刀子に横島は不思議そうに声をかけるが、刀子は僅かに苦笑いを浮かべて今は深く考えるのを止める
いろいろ思うところはあるのだが、それはもう少し時間をかけて考えるべきだと思ったのだ
「今の時間は二度と戻らないですからね。 俺は今を最大限楽しむようにしてるんっすよ」
僅かに迷いが見える刀子に、横島は余計かもしれないと理解しつつ一言語ってしまう
「えっ……!?」
その瞬間、何故か刀子には横島が別人のように見えた気がした
先程まで子供のように楽しそうに笑っていた横島が、まるで違う大人の表情に見えていたのだ
「喫茶店を始めたおかげで普段なら俺なんて相手にもしてくれないような美人さんと、こうやって一緒にお酒が飲めるんっすからね。 俺は楽しいっすよ」
「そんなに褒めても何も出ないわよ。 まあ、ただの客でいいならまた来てあげるけど……」
いつの間にかまた元の軽い調子の笑顔に戻っていた横島に、刀子は先程の表情は気のせいかと思う
そのまま刀子は横島のペースに引きずられるように会話を交わして、しばらく飲んだあとで帰ったようだ