平和な日常~秋~2

その後昼食はみんなで集まって食べることになっていたので、木乃香達や明日菜達などと合流する横島達だったが、応援に来た家族なども一緒に居たためにかなり賑やかになっていた。


「はじめまして、のどかの母です。 娘がお世話になってます」

「はじめまして横島です。 こちらこそお世話になってます」

集まった場所は中等部の中庭だったが、横島は初めて見る保護者達に挨拶回りをしていた。

身近なメンバーでは木乃香の父である詠春や、のどかの母やあやかや千鶴の家族なども何人か来ている。

のどかの母はのどかとよく似ており、おしとやかな女性だった。

横島はタマモと一緒にのどかの母から始まり、あやかや千鶴の家族などに続けて挨拶をしていく。


「貴女がタマモちゃんね。 噂通り可愛いわね~」

「ありがとう。 おねえさんもびじんだね」

場所が場所だけに堅苦しい挨拶ではないが、ある程度型通りの挨拶をする横島と対照的に人気だったのはやはりタマモである。


「娘が世話になって済まなかったね」

「いえ、こちらこそ余計な騒ぎを起こして申し訳ありません」

ある程度挨拶が終わるとタマモはあちこちに呼ばれていたが、横島は千鶴の父親と話をしていた。

挨拶は先程済ませたのだが、千鶴のストーカーの件で問題はすでに決着していたが早めに謝っておかなければならない相手である。


「構わんさ。 人様より目立つのは仕方ない立場だからね」

千鶴の父親はダンディな青年と言った印象だった。

ダンディなのは確かだが見た目年齢が三十代半ばなので、恐らく実年齢より十才は若いのだろう。

ちなみに横島の父親大樹もダンディな感じだったが、上品さは雲泥の差である。


「なかなかいい目をしてるな。 母さん達が面白い男だと言ってた意味が、分かる気がするよ」

横島は千鶴の両親がストーカーの件で騒ぎになったことを多少なりとも気にしてるかと思ったが、どうやら全く気にしてないらしくそんなことよりも彼の興味は横島に向いていた。

まるで横島の心を見透かすようなその眼差しは、千鶴の祖母や千鶴と同じだと感じる。


「よかったらうちの会社に来ないか?」

「おいおい那波。 ここで抜け駆けは酷いんじゃないか?」

「そうですよ。 娘さん達がビックリしてます」

そのまま千鶴の父と軽い世間話をしていた横島だが、突然会社に来ないかと誘われるとあやかの父親と詠春が会話に割り込んで来る。

どうも三人はかなり親しいらしくまるで悪友をからかうようなあやかの父親と詠春に、2-Aの少女達は半ば唖然としてしまう。


「声をかけるなら早い方がいいだろ」

「ほう、久しぶりにやるか?」

「今日の主役は娘さん達なんだから止めなさい」

親しげな三人だが千鶴の父とあやかの父が張り合うような会話になると、呆れた様子の詠春が止めにはいるが彼らも本気で張り合うと言うよりは遊んでる感じだ

そんな彼らの空気に割り込めるような猛者は、横島を含めてこの場にはいなかった。



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