平和な日常~秋~

さてこの日のパーティーは超と五月が中華部門の予選に挑んだ料理と、木乃香が予選に挑んだスイーツが主に振る舞われている。

三人の予選を応援に来ていたクラスメート達が、何時間も美味しそうな料理の審査見ているだけに我慢出来なくなったらしく食べたいと騒いだのだ。


「ねえ、これいくらで売るの?」

超達の中華と木乃香のスイーツはクラスメートにも評判はよく、超と五月の料理は明日からさっそく超包子の一部の店舗で販売を開始するらしい。

超と五月の二人は明日準決勝があるが、超包子自体は大学部のメンバーを中心に数店舗の営業をするようだった。

ちなみにスイーツ部門の予選一位の新堂美咲に関しても、自分の店で明日から数量限定で予選のスイーツを販売するようである。

商魂逞しい人々だが麻帆良では割と普通であり、クラスメートの少女達も当然木乃香のスイーツを横島の店で売るものだとばかり考えていた。


「いや、いくらって言われても、そもそも店で売る予定はないんだが」

「まさか三位に入るとは思わへんかったんや」

何気なく木乃香のスイーツの値段を尋ねられた横島と木乃香だが、二人揃って首を傾げてしまいそこまで考えてないらしい。

横島は相変わらずだが、木乃香自身も自分の順位は予想外であり終わった後まで考えてなかった。


「みんな当然売ると思ってるわよ」

麻帆良祭の後に本当にカレーを販売しなかった横島を知る故に、少女達は多少呆れつつも売るべきだと主張する。

ちなみに麻帆良カレーに関しては結局求めてくる客の為に現在も店で提供しているが、今回のスイーツも同じ結果になるのは目に見えていた。

それと少し話は逸れるが麻帆良カレーに関しては、最近では似たようなカレーを提供する店が麻帆良市内にだいぶ増えていた。

オリジナルはレシピを公開してないので横島の店と雪広グループのファミレスと麻帆良学園の一部の食堂のみでの販売だが、カレー専門店やレストランなどで独自に味を再現した類似メニューが結構増えている。

これに関しては雪広グループが麻帆良のご当地グルメとして積極的に麻帆良カレーを宣伝販売した影響で、夏場のピークを過ぎた辺りから麻帆良を訪れる観光客の多くが麻帆良カレーを求めた結果だろう。

おかげで雪広グループの系列レストランや麻帆良学園の食堂棟なんかは、訪れる観光客が数倍に跳ね上がっていた。

横島の店は宣伝を全くしてない影響で地元である麻帆良の人々しか来ないが、他の一般飲食店はご当地グルメと言われる麻帆良カレーを出さないと客が減ってしまったとの事情がある。

ただ類似メニューの乱立はご当地グルメとしての評判に関わるため、学園側と雪広グループでは共同で麻帆良カレーの商標の登録や基本レシピの公開を含めた料理の一定の品質の確保の為の検討に入っていた。

具体的に麻帆良カレー実行委員会という組織名も付けられ、横島も頼まれて実行委員会のメンバーになっている。

正直横島はこの手の問題を雪広グループに一任という名の丸投げをしているので名前が入ってるだけだが、他にも実行委員会のメンバーにはあやかと超と五月に加えて木乃香と夕映まで何故か加わっていた。

あやかと超と五月に関しては元々麻帆良カレーが2-Aの企画のメニューだったことから2-Aの代表として三名入っているが、木乃香と夕映は横島側の代表として加わっている。

二人はいわゆる人数合わせとして横島と同様に名前を入れただけなのだが、体育祭終了後の会議には参加しなくてはならない予定だった。



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