平和な日常~秋~
十月の夜はすでに肌寒く完全に秋の空気だった。
この夜は久しぶりに木乃香が早く帰ったので、横島はゆっくりとした時間を過ごしている。
「まさかあの方が麻帆良に来て、私にまで挨拶に来るとは思わなかったわ」
相変わらず夜は客がほとんど来なく横島は酒をちびちびと飲んでいたが、ちょうど仕事帰りの刀子が一人でやって来ていた。
どうも昼間に詠春が来たことがよほど驚きだったらしく、詠春の本来の立場や目的など核心をぼかしつつも横島に愚痴っている。
「意外と気さくな人でしたね」
「会ったのは始めてかしら?」
「もちろん始めてですよ。 あんな有名人と知り合う機会無かったですし」
横島も刀子もあえて核心には触れないが、刀子は横島が詠春の立場や過去を知ってると考えて話を進めていたし横島も否定はしなかった。
そもそも裏に関わる者でナギや詠春を知らぬ者はよほどの田舎者か、他の裏の関係者と一切関わらない者くらいだろう。
基本的には横島のようなはぐれ魔法使いには裏のことを聞かないのが暗黙の了解だが、生真面目な刀子ですらもそろそろ横島に対してはその辺を気にしなくなり始めている。
「そうよね。 私だって直接話したのは数えるほどしかないわ」
「生ける伝説ですからね。 キレると恐ろしいって噂は聞きましたよ」
「それは若い頃の話らしいわ。 なんでもサウザンドマスターと一緒の頃は目茶苦茶なことも多かったみたい」
お酒を飲みながら詠春の話を続ける二人だが、刀子とすれば詠春や近右衛門はやはり生きる世界が違うと感じてるようだ。
そんな人達と比べると横島はまだ庶民的で、一般の魔法関係者だと感じるらしく親近感を感じてるようである。
実は横島が一番非常識な存在だとはまだ気付いてないらしい。
「あら、体育祭に参加するの?」
そのままたわいもない世間話をしながら時間は過ぎるが、刀子はふとカウンターに置かれた体育祭の出場種目のオススメリストが目に入る。
「なんか保護者の参加が足りないみたいで」
「体育祭は中等部くらいが一番熱心なのよね。 でもあんまり熱くなってやり過ぎないようにね。 たまに子供の前だと熱くなってやり過ぎる人が居るのよね」
2-Aのみんなに参加を頼まれたと語る横島に刀子は相変わらずだと笑ってしまうが、同時にやり過ぎないようにと注意も忘れない。
それというのも子供の前でつい活躍したいと考え、やり過ぎる魔法関係者が時々現れるようだった。
流石におおっぴらに魔法を使う馬鹿は居ないようだが、身体能力の強化などをして世界記録など出した者が過去に居たようである。
刀子としては横島はどっか抜けており、また何かで目立ってしまうのではと多少心配してしまう。
「俺は大丈夫っすよ」
少し心配そうな刀子に対し横島は当然そんなヘマはしないと言い切るが、刀子の表情はあまり変わらなかった。
(確かに魔法は使わないけど、なんか余計に目立っちゃう人なのよね。 本当に大丈夫かしら?)
そもそも横島は魔法関係でヘマをしたことはないが、不用意に目立ち過ぎるのは魔法関係者としては問題だと見られている。
横島自身が必ずしも悪い訳ではないが、麻帆良に住む魔法協会外の人間で一番有名になってる現状を考えると刀子の不安はなくならないらしい。
微妙に嫌な予感のする刀子だが、横島は相変わらず気にした様子もなかった。
この夜は久しぶりに木乃香が早く帰ったので、横島はゆっくりとした時間を過ごしている。
「まさかあの方が麻帆良に来て、私にまで挨拶に来るとは思わなかったわ」
相変わらず夜は客がほとんど来なく横島は酒をちびちびと飲んでいたが、ちょうど仕事帰りの刀子が一人でやって来ていた。
どうも昼間に詠春が来たことがよほど驚きだったらしく、詠春の本来の立場や目的など核心をぼかしつつも横島に愚痴っている。
「意外と気さくな人でしたね」
「会ったのは始めてかしら?」
「もちろん始めてですよ。 あんな有名人と知り合う機会無かったですし」
横島も刀子もあえて核心には触れないが、刀子は横島が詠春の立場や過去を知ってると考えて話を進めていたし横島も否定はしなかった。
そもそも裏に関わる者でナギや詠春を知らぬ者はよほどの田舎者か、他の裏の関係者と一切関わらない者くらいだろう。
基本的には横島のようなはぐれ魔法使いには裏のことを聞かないのが暗黙の了解だが、生真面目な刀子ですらもそろそろ横島に対してはその辺を気にしなくなり始めている。
「そうよね。 私だって直接話したのは数えるほどしかないわ」
「生ける伝説ですからね。 キレると恐ろしいって噂は聞きましたよ」
「それは若い頃の話らしいわ。 なんでもサウザンドマスターと一緒の頃は目茶苦茶なことも多かったみたい」
お酒を飲みながら詠春の話を続ける二人だが、刀子とすれば詠春や近右衛門はやはり生きる世界が違うと感じてるようだ。
そんな人達と比べると横島はまだ庶民的で、一般の魔法関係者だと感じるらしく親近感を感じてるようである。
実は横島が一番非常識な存在だとはまだ気付いてないらしい。
「あら、体育祭に参加するの?」
そのままたわいもない世間話をしながら時間は過ぎるが、刀子はふとカウンターに置かれた体育祭の出場種目のオススメリストが目に入る。
「なんか保護者の参加が足りないみたいで」
「体育祭は中等部くらいが一番熱心なのよね。 でもあんまり熱くなってやり過ぎないようにね。 たまに子供の前だと熱くなってやり過ぎる人が居るのよね」
2-Aのみんなに参加を頼まれたと語る横島に刀子は相変わらずだと笑ってしまうが、同時にやり過ぎないようにと注意も忘れない。
それというのも子供の前でつい活躍したいと考え、やり過ぎる魔法関係者が時々現れるようだった。
流石におおっぴらに魔法を使う馬鹿は居ないようだが、身体能力の強化などをして世界記録など出した者が過去に居たようである。
刀子としては横島はどっか抜けており、また何かで目立ってしまうのではと多少心配してしまう。
「俺は大丈夫っすよ」
少し心配そうな刀子に対し横島は当然そんなヘマはしないと言い切るが、刀子の表情はあまり変わらなかった。
(確かに魔法は使わないけど、なんか余計に目立っちゃう人なのよね。 本当に大丈夫かしら?)
そもそも横島は魔法関係でヘマをしたことはないが、不用意に目立ち過ぎるのは魔法関係者としては問題だと見られている。
横島自身が必ずしも悪い訳ではないが、麻帆良に住む魔法協会外の人間で一番有名になってる現状を考えると刀子の不安はなくならないらしい。
微妙に嫌な予感のする刀子だが、横島は相変わらず気にした様子もなかった。