平和な日常~春~

「難しく考える必要はないよ。 占いたい事を願って占えば、カードが答えてくれる」

その日の夕方、横島は初めて木乃香に占いを教え始めていた

ずっと占いを教えて欲しいと頼まれつつも適当にはぐらかしていた横島だったが、木乃香の期待は日に日に大きくなり横島はとうとう占いを教える事にしていたのである

最も霊能とは無縁の一般的な方法であり、占う方法も素人でも比較的分かりやすいタロット占いを教えていた


(こりゃ眠れる潜在能力がいつ開花しても不思議じゃないわ)

あくまでも一般的な方法だけを教えていた横島だったが、真剣に集中する木乃香の表情は今までに見たことがないほどに神秘的だった

未来を見ようと懸命に集中する木乃香の様子は、霊感を解放する霊能者に僅かだが似ている

それは無意識であり今は力そのものは全く使えてないが、やり方は間違ってなく元々高い潜在能力が開花するのはある意味時間の問題だった


(才能ってやつか。 無意識だけど霊感を使おうとしてる)

実際木乃香の才能はいつ開花しても不思議ではないレベルである

横島はあくまでも一般的な占い方法しか教えてないが、この調子で占いを続ければいずれ力に目覚めコントロールを学ぶ必要があるだろう


(まあ、俺が関わることじゃないな)

木乃香の才能に驚きを感じつつも、現状で横島は手出しするつもりはなかった

潜在能力に関しては祖父も知ってるだろうし、目覚めそうな現状も理解してるはずである

他人の自分が手出しする必要はないと、この時の横島は考えていた


「なるほど~、もっと練習せなあかんのやね」

何度か占い練習する木乃香だが何かしっくり来ないらしく、ニコニコとした笑顔のまま練習が必要だと痛感している


「占いは外れて当然だからな。 あんまり気合いを入れすぎんと気楽にな」

普段はおっとりしている木乃香だったが、占いする時の集中力は段違いなのだ

横島は下手に力が目覚めないように、気楽に考えるように告げるしか出来なかった



「おっ、そろそろ出来たかな」

木乃香への占いの指導が一段落した頃、厨房で茹でていた新ジャガが茹であがる

横島はそれを取り出して塩とバターを添えて、木乃香と試食しようとしていた


「いい新ジャガが手に入ったんだわ。 とりあえずそのまま食おうか」

「熱いけど美味しいわ~」

熱々の新ジャガをそのまま食べる二人だったが、ほくほくとしたジャガイモは余計な味付けが要らないほど美味しい


「ウチはこのままでもいいと思うわ」

「このまま茹でたジャガイモ出すのか?」

新ジャガを試食する二人はどんな料理がいいか考えていたが、木乃香はふとこのまま茹でたジャガイモをそのまま提供すればいいと言い出す

そんな木乃香の意見に横島は少し驚くが、レストランならともかく喫茶店ならそれもアリかと考えていく


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