平和な日常~秋~
(あれが木乃香ちゃんの親父さんか~)
詠春に出す飲み物を作るため一旦カウンターに戻る横島だが、予期せぬタイミングで詠春と初対面したことに少々驚いている。
近衛詠春こと旧姓青山詠春は、魔法世界で最も有名な剣士の一人であることに他ならない。
二十年前の大戦後、メガロメセンブリアの勢力が日本から撤退すると同時に近右衛門が関東魔法協会を掌握したが、それに合わせるように詠春は関西呪術協会の長に就任している。
元々関西呪術協会は二十年前の大戦終了まで近右衛門の兄が長を勤めていたが、高齢を理由に詠春を近右衛門の娘婿に迎え地位を譲っていた。
近右衛門の兄は子に恵まれなかったこともあり家督を近右衛門に譲り関西呪術協会のトップを詠春に譲ったが、全ては東西に分かれた魔法協会を統合する為の布石であった。
元々明治以来東西に分かれた魔法協会の統合は近衛家の悲願の一つでもある。
本来近衛本家は関西呪術協会の長となり、一族の一人を日本側の勢力の代表として関東に送るのが習わしだった。
関東魔法協会は元々メガロメセンブリアに牛耳られていたが、それでも中堅から末端は日本の魔法使いが多数であり当然日本側の代表として近衛家も幹部の一員だったのだ。
二十年前の大戦時に近右衛門がメガロメセンブリア勢力の追い出しを画策し、当日長だった兄がバックアップしたというのが真相である。
実際メガロメセンブリアでは、この出来事を近衛家によるクーデターと独裁だと騒いだがあながち間違いではない。
少し話が逸れたが詠春は元々関東と関西の統合を前提として長に就任した経緯があった。
(根っからの剣士って感じで政治家向きの人じゃないな)
悪い人間ではないし組織のトップとしても無能ではないのだろうが、残念ながら横島にも詠春は政治向きの人間には見えなかった。
詠春に関しては土偶羅の報告で結構詳しく知っていたが、どちらかと言えば小竜姫や唐巣のような甘さというかお人よしな面が見えている。
はっきり言えば理想と綺麗なだけでは政治は出来ないし、近右衛門が後継者問題に悩んでいた理由が横島には理解出来た気がした。
「今夜少し時間を頂けますか? 少し話したいことがあるんです」
一方横島が離れたエヴァの元ではタマモが相変わらず座っておりエヴァと詠春の話を聞いているが、詠春は話したいことがあるとエヴァに告げる。
「……いいだろう。 今夜家に来るといい。 タマモ、今の話は木乃香に言うなよ」
なんとなくいつもと違う詠春の雰囲気にエヴァはすぐに了承すると、そのままタマモに口止めをした。
「このお嬢さんは……」
「お前の娘と仲がいいのだ。 余計なことは知られたくないのだろう?」
エヴァの口止めに詠春はようやくタマモを見るが、この時始めて妖怪だと気付いたらしく驚きの表情を見せる。
「はじめまして、わたしはタマモ。 よろしくおねがいします」
意味ありげな表情をしながら口止めが必要だろうと言うエヴァだが、タマモは詠春に対し丁寧に挨拶をした。
木乃香の父親だと先程横島に挨拶した時からタマモは詠春に興味津々だったのだが、エヴァと意味ありげな雰囲気で話すのを見て自重していたらしい。
エヴァの言葉にようやく自分も話していいと理解したようでタマモは嬉しそうに挨拶をしていた。
詠春に出す飲み物を作るため一旦カウンターに戻る横島だが、予期せぬタイミングで詠春と初対面したことに少々驚いている。
近衛詠春こと旧姓青山詠春は、魔法世界で最も有名な剣士の一人であることに他ならない。
二十年前の大戦後、メガロメセンブリアの勢力が日本から撤退すると同時に近右衛門が関東魔法協会を掌握したが、それに合わせるように詠春は関西呪術協会の長に就任している。
元々関西呪術協会は二十年前の大戦終了まで近右衛門の兄が長を勤めていたが、高齢を理由に詠春を近右衛門の娘婿に迎え地位を譲っていた。
近右衛門の兄は子に恵まれなかったこともあり家督を近右衛門に譲り関西呪術協会のトップを詠春に譲ったが、全ては東西に分かれた魔法協会を統合する為の布石であった。
元々明治以来東西に分かれた魔法協会の統合は近衛家の悲願の一つでもある。
本来近衛本家は関西呪術協会の長となり、一族の一人を日本側の勢力の代表として関東に送るのが習わしだった。
関東魔法協会は元々メガロメセンブリアに牛耳られていたが、それでも中堅から末端は日本の魔法使いが多数であり当然日本側の代表として近衛家も幹部の一員だったのだ。
二十年前の大戦時に近右衛門がメガロメセンブリア勢力の追い出しを画策し、当日長だった兄がバックアップしたというのが真相である。
実際メガロメセンブリアでは、この出来事を近衛家によるクーデターと独裁だと騒いだがあながち間違いではない。
少し話が逸れたが詠春は元々関東と関西の統合を前提として長に就任した経緯があった。
(根っからの剣士って感じで政治家向きの人じゃないな)
悪い人間ではないし組織のトップとしても無能ではないのだろうが、残念ながら横島にも詠春は政治向きの人間には見えなかった。
詠春に関しては土偶羅の報告で結構詳しく知っていたが、どちらかと言えば小竜姫や唐巣のような甘さというかお人よしな面が見えている。
はっきり言えば理想と綺麗なだけでは政治は出来ないし、近右衛門が後継者問題に悩んでいた理由が横島には理解出来た気がした。
「今夜少し時間を頂けますか? 少し話したいことがあるんです」
一方横島が離れたエヴァの元ではタマモが相変わらず座っておりエヴァと詠春の話を聞いているが、詠春は話したいことがあるとエヴァに告げる。
「……いいだろう。 今夜家に来るといい。 タマモ、今の話は木乃香に言うなよ」
なんとなくいつもと違う詠春の雰囲気にエヴァはすぐに了承すると、そのままタマモに口止めをした。
「このお嬢さんは……」
「お前の娘と仲がいいのだ。 余計なことは知られたくないのだろう?」
エヴァの口止めに詠春はようやくタマモを見るが、この時始めて妖怪だと気付いたらしく驚きの表情を見せる。
「はじめまして、わたしはタマモ。 よろしくおねがいします」
意味ありげな表情をしながら口止めが必要だろうと言うエヴァだが、タマモは詠春に対し丁寧に挨拶をした。
木乃香の父親だと先程横島に挨拶した時からタマモは詠春に興味津々だったのだが、エヴァと意味ありげな雰囲気で話すのを見て自重していたらしい。
エヴァの言葉にようやく自分も話していいと理解したようでタマモは嬉しそうに挨拶をしていた。