平和な日常~秋~
さて月曜日になった横島の店では木乃香が早朝の仕込みの時間からやって来ており、体育祭の料理大会に向けてスイーツの試作を始めていた。
前日の果物狩りは無駄では無かったらしく、予選で作るスイーツのアイデアが幾つか浮かんだらしい。
「モンブランか~。 確かにこの季節の栗は美味いからな」
まず手始めに作り出したのは、前日の観光農園で収穫してきた栗を使ったモンブランだった。
調理法なんかは横島は一切口出しせずに朝の定食や販売用のスイーツを作っているが、やはり木乃香の方が気になるらしくちょくちょく様子を見ている。
「栗は昔からよう食べたんよ。 最初は食べ慣れた物から始めようかと思ったんや」
「関西じゃ丹波辺りの栗は、美味いやつは本当に美味いからな。 本番も栗をそのまま生かせば予選なら楽勝だと思うぞ」
幼い頃より一番食べ慣れた物から始める木乃香に横島は相変わらず楽観的なことを言うが、木乃香は微妙に苦笑いを浮かべてしまう。
本格的に作る側に回って始めて理解することもあるし、木乃香は今回料理大会に向けて練習を始めてから横島の実力の高さを再認識している。
いい食材を生かしたまま作るのは当然として、それなりの食材でも驚くほど美味しく作れる技術は並大抵の物ではない。
まして木乃香は幼い頃からの環境のせいか、味の微妙なさじ加減までわかるので人一倍敏感に感じていた。
「おはようございます!」
一方店の表ではさよとタマモが店の外観と周辺の掃除をしていた。
隣近所の住人や顔なじみの人達に挨拶しながら掃除をしている。
開店当初は横島が一人で掃除から仕込みまで全てしていたが、いつからかさよとタマモが開店前の掃除を手伝うようになっていた。
実際には閉店後も掃除をしているのでさほど汚れてる訳ではないが、店の前の道路を早朝に掃除するのは横島の店がある通りの人々の習慣であり横島達も当然行っている。
「これ、きのうくだもの畑にいったおみやげだよ」
「あら、貰っていいのかい?」
「うん!」
そしてタマモは例によって、またお土産を知り合いに片っ端から配っていた。
流石に一人一人の量は少ないが、梨や葡萄や柿などをセットにして近所の住人に配っていく。
「いつもありがとうね。 今後お返しするから楽しみにしててね」
お土産を上げた相手が喜ぶと、タマモは素直に嬉しそうだった。
最初の頃は若干戸惑っていた人達も居たが、最近はすでに慣れたもので何かしらのお返しをくれる人も多い。
「最初はどうなるかと思ったけど、繁盛してるみたいでよかったわね」
この時タマモがお土産を渡したのは近所のおばさんだったが、実は開店当初から横島の店を心配していた一人である。
開店当初は安い値段から客こそ入っていたが利益が出てるように見えなかっただけに、心配して商売のイロハを横島に教えたりしていた人物だった。
「はい、ありがとうございます」
「先日貴女達の前にここでお店をやってる人に偶然会ったけど、新しい人がお店を繁盛させてるって教えたら喜んでたわよ」
髪の色が違うので実の姉妹には見えないが、本当の姉妹のように仲睦まじいタマモとさよにおばさんもどこか嬉しそうな笑顔を見せる。
そんなおばさんから聞いた前の店の人の話に、タマモとさよは興味津々でしばらく話し込むことになる。
前日の果物狩りは無駄では無かったらしく、予選で作るスイーツのアイデアが幾つか浮かんだらしい。
「モンブランか~。 確かにこの季節の栗は美味いからな」
まず手始めに作り出したのは、前日の観光農園で収穫してきた栗を使ったモンブランだった。
調理法なんかは横島は一切口出しせずに朝の定食や販売用のスイーツを作っているが、やはり木乃香の方が気になるらしくちょくちょく様子を見ている。
「栗は昔からよう食べたんよ。 最初は食べ慣れた物から始めようかと思ったんや」
「関西じゃ丹波辺りの栗は、美味いやつは本当に美味いからな。 本番も栗をそのまま生かせば予選なら楽勝だと思うぞ」
幼い頃より一番食べ慣れた物から始める木乃香に横島は相変わらず楽観的なことを言うが、木乃香は微妙に苦笑いを浮かべてしまう。
本格的に作る側に回って始めて理解することもあるし、木乃香は今回料理大会に向けて練習を始めてから横島の実力の高さを再認識している。
いい食材を生かしたまま作るのは当然として、それなりの食材でも驚くほど美味しく作れる技術は並大抵の物ではない。
まして木乃香は幼い頃からの環境のせいか、味の微妙なさじ加減までわかるので人一倍敏感に感じていた。
「おはようございます!」
一方店の表ではさよとタマモが店の外観と周辺の掃除をしていた。
隣近所の住人や顔なじみの人達に挨拶しながら掃除をしている。
開店当初は横島が一人で掃除から仕込みまで全てしていたが、いつからかさよとタマモが開店前の掃除を手伝うようになっていた。
実際には閉店後も掃除をしているのでさほど汚れてる訳ではないが、店の前の道路を早朝に掃除するのは横島の店がある通りの人々の習慣であり横島達も当然行っている。
「これ、きのうくだもの畑にいったおみやげだよ」
「あら、貰っていいのかい?」
「うん!」
そしてタマモは例によって、またお土産を知り合いに片っ端から配っていた。
流石に一人一人の量は少ないが、梨や葡萄や柿などをセットにして近所の住人に配っていく。
「いつもありがとうね。 今後お返しするから楽しみにしててね」
お土産を上げた相手が喜ぶと、タマモは素直に嬉しそうだった。
最初の頃は若干戸惑っていた人達も居たが、最近はすでに慣れたもので何かしらのお返しをくれる人も多い。
「最初はどうなるかと思ったけど、繁盛してるみたいでよかったわね」
この時タマモがお土産を渡したのは近所のおばさんだったが、実は開店当初から横島の店を心配していた一人である。
開店当初は安い値段から客こそ入っていたが利益が出てるように見えなかっただけに、心配して商売のイロハを横島に教えたりしていた人物だった。
「はい、ありがとうございます」
「先日貴女達の前にここでお店をやってる人に偶然会ったけど、新しい人がお店を繁盛させてるって教えたら喜んでたわよ」
髪の色が違うので実の姉妹には見えないが、本当の姉妹のように仲睦まじいタマモとさよにおばさんもどこか嬉しそうな笑顔を見せる。
そんなおばさんから聞いた前の店の人の話に、タマモとさよは興味津々でしばらく話し込むことになる。