平和な日常~秋~

横島達が休日を満喫していた頃、大学部に借りていた研究室では超鈴音が現在の状況に頭を抱えていた。

ネギ・スプリングフィールドが麻帆良に来なくなって以降、彼女の知る歴史は最早参考資料程度にしか役に立たない。

そして秘密結社完全なる世界のフェイト・アーウェルンクスは、ネギと同じく今後の世界の鍵を握る一人と言っても過言ではない存在なのだ。


「まさか彼がこの時点で見つかるとは思わなかったネ」

実のところ超も完全なる世界の計画や情報にはあまり詳しくはない。

そもそも超の生まれた時代には完全なる世界はすでに存在しなく、当時を知る仲間達の情報や事実として残された歴史くらいしか知ることが出来なかったのだ。


「どのみち彼女が自ら向こうへ行く可能性は低いネ。 彼らは本来はどうするつもりだったかが問題ヨ」

超の歴史では来年の夏には歴史的な事件が起こるはずだった。

しかしその事件の一番の鍵になる人物が、この世界では魔法世界に行くとは思えないのである。

このままだと来年の夏も彼女は今年と同じく、普通に喫茶店でバイトをしてるだろう。


「結局はあの人の存在が気になるのはこちらも同じネ」

超の計画に関しても本来の歴史に関しても、超にとって気になる存在は同じ人物であった。



横島忠夫。 日本人の術士。 流派不明。 戦闘力不明。 霊体の実体化が出来る模様。 気配察知能力もそれなりであり、おそらく相応の実力を持つ。

第二種保護対象。


それは超がハッキングして調べた、関東魔法協会の横島に関する情報のごく一部であった。

この他にも細々と情報はあるが、超はそんな横島の情報を見てため息をつく。


「情報だけ見てると面白みのない人ネ」

魔法協会の横島に対する評価は低くはないが高くもない。

横島の過去の調査結果も書かれているがこちらも特に怪しいところはなく、割とどこにでもいるはぐれ魔法使い程度だった。

ただ未来世界の歴史を知る超としては、どうしても気になる存在である。

まるで小骨が喉に刺さってるような微妙な感覚を横島に感じてならないのだ。

超の計画にしても完全なる世界の計画にしても同じく必要なのはアスナ姫であるが、その際に何故か横島の顔が頭を過ぎる。

ただ仮に横島が高畑やナギクラスの実力を隠していても、恐らく歴史の流れは変わらないと超は見ている。

個人の武力で世界が変わるほど甘くないのは歴史が証明している訳だし。


「それでもワタシは……」

客観的に見ると横島を気にする必要はないと理解してる超だが、まるで彼女の第六感が警告を鳴らすように気になってしまう。


「考えても仕方ないネ。 ワタシはやるべきことを進めよう」

横島も気になるが超にはまだまだ問題が山積みだった。

自身の計画も進めねばならないし、今回の件で今後の出方が読めなくなったフェイトへの警戒も必要である。

超の計画の邪魔にならないとは限らないし、明日菜を連中にさらわれては困るのだ。

最終的に超は明日菜を影から守る側にも着かざる負えなかった。



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