その後果物狩りを終えた一行は観光農園を後にするが、帰り際には例によってタマモがお土産にと果物を大量に買い込むが、それはいつものことである。


「ねえ、近くで休めるとことかないの？」

果物狩りも終わりこの後どうしようかと話を始める少女達だが、お腹は結構いっぱいであり全体的に食べることはしばらくは無理という空気だった。

その結果近くでゆっくり出来る場所でもないかと探すが、田舎に若い女の子が喜ぶような施設などそうそうあるはずがない。


「近くに日帰り温泉ならあるようですよ」

付近は山が多く田畑や果樹園など時折ある典型的な田舎だったが、運よく近くでコンビニを見つけ近くの観光雑誌を購入し調べるが見つかったのは名前も聞いたことがないような温泉だけである。


「温泉ってことは混浴！？」

「幸か不幸か混浴ではないようですよ」

みんなで固まって雑誌を見ていた少女達だが、温泉を見つけると美砂やハルナのテンションが上がってしまう。

しかし混浴などない普通の温泉だとの説明文を夕映が読むと、美砂とハルナは少しがっかりしながらもニヤリと意味ありげな表情で横島に近寄る。


「残念だったわねー、マスター」

「絶好のチャンスだったのにね」

「言うと思ったよ」

ニヤニヤとした笑顔を見せる二人はさっそく混浴でからかうが、横島は困ったように渇いた笑いを見せるしか出来なかった。

はっきり言うとこのメンバーで混浴なんてすれば、美砂やハルナが悪のりするのは明らかなのだ。

横島も学生の頃ならば血の涙を流して悔しがっただろうが、流石にいい年した大人なので反応に困ってしまう。

元々横島は嫌われるのは慣れているが、やはり女性から攻められるのは苦手である。

しかもせっかく好感度が高いのをわざわざ落としたいと思うほど女が嫌いなはずもない。


「あんた達いい加減にしなさいよ。　横島さん困ってるじゃない。　トラウマが悪化したらどうするのよ！」

微妙な距離で横島をからかう二人を円や桜子が近くでクスクスと笑っているが、そんな状況に助けに入ったのは明日菜だった。

これも以前から時々あることだが、美砂達が少々過激に横島に絡むと明日菜が止めるという方程式がいつの間にか出来上がっている。

そもそも横島が女性にトラウマがあるのは最早事実化しているが、その横島に対しての対応は結構バラバラだった。

簡単に分けるとだいたいはが木乃香達などの現状を見守る派と、美砂達のような積極的に女に慣れさせようとする派に二分されている。

そして美砂達のような行動を止めれるのは、木乃香達では明日菜くらいしかいなかった。


「おふろはかぞくじゃない、男のひとと女のひとはべつなんだよね！　わたししってるよ」

「あら、よく知ってるわね。　でも男の人も女の人も関係なく一緒に入れるお風呂もあるのよ」

「やっぱりみんなもいっしょがたのしいのかな？」

一方観光雑誌を見ていた面々は横島達の騒ぎは見慣れたものだったようで、タマモと一緒に温泉の話をしていた。

タマモの場合は日頃は横島と一緒に入るか、さよとハニワ兵と一緒に入るかのどちらかしか経験がなかったので、どうやらみんなでお風呂に入りたいと常々思ってたらしい。

ちょっと誤解をしそうなタマモに、木乃香達や刀子や千鶴達がなんとか常識を教えようと四苦八苦していく。