平和な日常~春~

(九十九神の一種か。 随分新しい魂だが、アンドロイドに自然な魂が宿るなんてな)

人工知能を持つ茶々丸に魂が宿った事実に、横島は内心で改めて驚いていた

実は初対面の時に気付いていた事だが、茶々丸には魂が定着している

それも人工的に与えた魂ではなく、自然と生まれた魂なのだ

古来より長年大切にされた物は魂が宿り九十九になることはあったが、人工知能持ちのアンドロイドが自然な魂を持った前例は横島でも知らない

ある意味科学と魔法の究極の一例とも言える現象だった


(カオスが見たら興奮するんだろうなー)

アンドロイドへ魂を与えた前例は、横島が知る限りではドクターカオスしか居ない

魔法の力も感じるが科学の身体を持つ茶々丸が魂を持った事実を知れば、カオスが興奮することは明らかである


(純粋な魂は見てて心が安らぐな)

茶々丸の魂は人間で言えば赤ちゃんそのものである

誕生してまだ月日があまり過ぎていないらしく、その輝きは純粋そのものだった

横島はかつての仲間だったマリアを思い出し少し胸が痛くなるが、茶々丸がこの先幸せになればいいと願わずには居られなかった



「あの……、何をなさってるのですか?」

横島が僅かに考え込んでる間に、茶々丸は数匹の猫に囲まれながら横島の作業を見つめていた

猫達も茶々丸も横島が何をしてるのか気になったらしい


「これか? そいつらの寝床でも作ろうかと思ってな。 流石に雨の中で野ざらしじゃ可哀相だからさ」

説明しながらも横島はテキパキと作業を続けていた

猫達が快適なように床板や壁の木材はニスを塗って乾かしておく

他にも窓用の穴を開けて開閉式の窓もつけるなど、それは細かい配慮が行き届いた物である


「次の雨までには出来るからな~」

結局この日はある程度作業を進めたところで時間になった為に、木材を日影に日干しして終わりことになった


「お邪魔しました」

「おう、庭だったら俺が居なくても自由に入っていいからな。 んじゃ気をつけて帰れよ」

横島が庭での作業を終わり店に入ろうとした時、茶々丸は丁寧にお礼を告げて帰っていく

相変わらず表情が乏しいが、どこか微笑んで見えるのは気のせいではないだろう


その後はいつものように店の準備をしていく横島だが、久しぶりに純粋な魂を見れたからかこの日は気分がいい朝になっていた



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