平和な日常~秋~

同じ頃、女子中等部の校庭では体育祭の練習をする生徒で溢れていた。

学園都市と言うだけあって普通の学校よりは設備が整ってる麻帆良学園だが、それでも校庭や中庭なんかは生徒の人数から考えると手狭である。

特にこの時期体育祭の練習は、練習場所を確保するだけでも一苦労だった。


「うわ~、アスナまた早くなったね」

「陸上部なのに負けそうだよ」

この日2-Aは校庭の隅の方で陸上競技の練習をしていたが、そんな中でも好調だったのは明日菜である。

他にはあやか・まき絵・裕奈・美空・楓・古菲など運動が得意な者達が集まって練習していたが、足の速さはクラスでは明日菜と美空がトップらしい。

まあ実際には楓や刹那などの裏の力を持つ者が上なのだろうが、魔法を知らぬ楓でさえ必要以上の力を出して目立つつもりはないようだった。


「陸上部に入ればいいのに」

「私は新聞配達もあるし、やっぱ運動部は無理かな」

最近の練習で日頃の体育なんかよりも調子がいい明日菜に、まき絵や裕奈なんかは運動部を勧めるが正直明日菜にはそんな余裕はない。

話がお金に関わると流石にまき絵達は微妙な表情をするが、こればっかりはどうしようもなかった。


「おしゃべりはそのくらいにして、リレーの練習に入りますわよ」

そんな微妙に空気が重くなったのを感じたあやかは、話を変えるように練習内容を変更する。

体育祭の練習は基本的に放課後に行っているが、内容に関しては個人と団体で行う競技の練習が半々くらいであった。

リレーや綱引きなどの団体戦の競技も複数あり、それらの競技の練習も当然必要なのだ。


「えー、ちょっと休もうよ」

「そうそう、おやつもいっぱいあるし」

一応体育祭の練習をしている少女達だが、ストイックに練習をすると言うよりは和やかな空気の中で和気あいあいと練習してる感じである。

先程夕方の新聞配達のついでに横島の店に寄った明日菜は差し入れにスイーツとスポーツドリンクを貰っており、少女達はそちらの方が気になってるらしい。

木乃香達や美砂達は太るのを心配して自重しているが、今日練習に集まったメンバーはどちらかと言えば食べたら動けばいいと考えるタイプだった。

その結果、休憩と称しておやつタイムの時間がやたらと増えている。


「……アスナさん、明日からはおやつの持ち込みは止めて下さいね」

それなりの量のスイーツを差し入れで貰って来たので、まき絵達や古菲などがパクパクと食べており練習にならない。

あやかは明日菜に明日からはスイーツを持ち込まないようにと深いため息をはくしかなかった。


「いや~、ごめんね」

差し入れを渡した横島も持って来た明日菜も悪気はないが、明らかに練習の邪魔になっている。

しかも周りの人達からは呆れたような少し羨ましそうな視線が集まっており、それにはあやかも明日菜も恥ずかしそうだった。

そもそも陸上の練習におやつは不要なのだが、横島は時々こんなミスをしてしまうようである。



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