平和な日常~秋~

それから数日が過ぎ暦は代わり十月に入っていた。

麻帆良学園では体育祭の準備が放課後を中心に進むが、麻帆良祭ほどの派手さはない。


そんな中で八月の納涼祭で顧客を増やした芦コーポレーションのSNSは、《カグヤ》の名称で正式に業務を開始していた。

このSNSカグヤだが、既存のSNSとの大きな違いは次元が違う安全性が上げられる。

一番大きいのは今後問題になるだろう出会い目的の利用は厳しく規制しており、その手の業者も徹底的に排除していた。

これに関しては土偶羅が異空間アジトから持ち出した監視用プログラムで警告や自動退会になるシステムであり、一部の利用者からは厳し過ぎるとの声まで上がってるほどだ。

しかしそれでも出会い目的の人を百パーセント防ぐのは不可能である。

登録時の警告や指導を徹底するなど対策は二重三重にしているが、全てはSNSの未来をある程度予測出来る故の方針だった。


加えて芦コーポレーションはこの時期に業務を拡大して、インターネットを用いた販売業務の部署とサイバー犯罪対策の部署を新設する。

両部門共に現状はサービス開始の準備期間が始まったばかりであり、これから人材確保や各種準備が行われる予定であった。

ちなみに納涼祭の後で芦コーポレーションは麻帆良学園の支援に名乗りを上げ、支援企業の末端に名前を連ねている。

麻帆良学園の支援企業に関しては以前にもいろいろ説明したが、雪広・那波を中核とする経済勢力のグループだった。

中核企業は魔法協会との繋がりがありそれなりの利点も大きいが、末端はほぼ利点がなく本当に麻帆良学園を支援するだけである。

ただそれでも雪広や那波などの大企業との繋がりが持てるのは、中小企業にとってメリットが大きい。

国際企業として独自の情報網を持つ両社は、末端企業に対しても任意で一部情報提供や経営アドバイスなどをしている。

特に海外展開などでは両社の協力は世界を知らぬ中小企業の大きな手助けとなっており、海外で戦争や内乱などの紛争が起きた際も日本政府より早く速やかに脱出させてくれた過去もあり信頼得が高い。

ただそんな末端の支援企業ですら、麻帆良学園側からの厳しい審査に受からなければ加われなかった。

まあ具体的にはもちろん日本企業であることが前提だが、経営状況から株式の保有状況まで明確な規定がある。

規定は極秘であり外部は知ることは出来ないが、基本的に外資や外国人が関わる企業が加わった実績はない。

そのため麻帆良学園の支援企業は、雪広と那波を除けば割と小ぶりな企業が多い。

芦コーポレーション場合は実質的なオーナーが横島なことや社長を勤める土偶羅の人型分体の過去などまで、全て麻帆良学園に申告して綿密な調査を受けていた。

本来は調査だけで数ヶ月から年単位の月日がかかるのが普通だが、オーナーの横島が近右衛門がよく知る人物だったことで審査が早まっている。

元々芦コーポレーションには調べるだけの実績も過去もなく、調査は社長の過去と横島との関係を重視したらしい。

ちなみに社長の過去は偽造した横島の両親の友人という位置付けであり、両親と同じ故郷の者だということにしていた。

社長がフリーの魔法関係者ということで多少議論はあったようだが、国内のフリーの魔法関係者が魔法協会の庇護を求めるのは決して珍しくはない。

元々横島が無害な人間だとの事実もあり、支援金の割に利点が少ない末端ならば構わないとの結論に達したようだ。

結果土偶羅はこちらでも魔法協会との接触に成功していた。



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