平和な日常~春~

麻帆良を離れた横島だったが、そこはやはり記憶にある元の世界の日本とほとんど変わらぬ世界だった

唯一違うのは街中にあるはずのGS事務所がないことくらいか

似て非なる世界に横島は複雑な感情が込み上げてくる


(異世界か……)

普段はあまり考えないようにしているが、横島は自分が異端のよそ者なのだと改めて感じてしまう

そんな落ち込みかけた気持ちを立て直すように、周りの景色に視線を移して気を紛らわしていく



そのまま特にあてもなくコブラを走らせていた横島だったが、気が付くと視線の先に僅かに赤い鉄塔が見える道を走っていた


「なんとなく東京に来ちまったな」

久しぶりの平和な東京に懐かしさが込み上げて来るが、やはりそこは見知らぬ世界だった

かつての世界と違い神魔の気配がほとんどしない東京は、横島にとっては違和感がある場所である

そのまま似て非なる東京を適当にコブラで回って行く


「あー! 占い師さん発見!!」

渋谷の辺りを信号待ちしていた横島に突如聞き覚えのある声が聞こえてくる


「えっ……!?」

「やっぱりそうだ!」

驚きポカーンとしていた横島の元に走って来たのは、桜子・美砂・円の三人だった


「偶然だな。 しかも桜子ちゃんとは、また意外な場所で会ったな~」

見知った三人に偶然会った横島は車を脇に寄せて少し話をするが、三人はよく都内に遊びに来てるらしい

そんな時に桜子が偶然、コブラに乗った横島を見つけたようだ


「凄い車ね~」

「外車!? 結構高そう!!」

「知り合いの車だよ。 たまに借りて乗ってるんだわ」

横島を見つけてニコニコと楽しそうな桜子と違い、美砂と円は横島の服装や車に興味を持ちキョロキョロと見てまわる


「もしかして実家はお金持ち?」

「なんか変わった人だとは思ってたけど、こうして見るとお金持ちそうな人ね」

見慣れぬコブラを乗る横島に興味を持った二人は、コソコソと内緒話をしていた

二人の想像が何やらおかしな方に進んでるのが聞こえていた横島だったが、内緒話に弁解する訳にもいかずに微妙に渇いた笑いを浮かべてしまう


「せっかく会ったんだから、一緒に遊びに行こう!」

二人が内緒話をしてる間に横島は桜子と話をしていたが、桜子はサラッと横島を遊びに誘っていた

木乃香達を除いて横島が一番親しいのは、ビッケの事でメールをする事になった桜子だったりする

ビッケとクッキの相談などから始まり、日常的なメールをする事もあったりして結構仲がいい

特に桜子は食べたい物があれば横島に頼む事が一番多く、何度か桜子のリクエストの限定メニューの日があったくらいだ

木乃香達に比べて遠慮が少ないとも言えるが……


「あっ、それいいですね!」

「カラオケなんかどうですか?」

桜子が横島を誘ってるのに気付いた美砂と円もそれに乗っかる形になり、横島は暇だった事もあり桜子達と遊びに行く事になる


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