平和な日常~秋~

「それじゃ、始めようか」

遠足の土産話で盛り上がったその日の夜、横島はタマモとさよと木乃香達四人の計七人でお土産のお礼にするクッキー作りを始めようとしていた。


「普通に作っても面白くないから、ちょっとアレンジしてみっか」

意味深な笑みを浮かべてお菓子作りを始める横島だが、木乃香達はお菓子作りに面白さが必要なのかとの疑問を感じる。

まあいつものことなので特にツッコミはしないが。


「豆乳におからですか?」

クッキー作りをすると聞いて勉強がてら参加したのどかは、材料が普通と違うことに少し驚く。


「おからのクッキーは麻帆良祭の前に一回試作したんだが、今回はよりカロリーを低くしてみようかと思ってな」

安くて栄養満点のおからを横島は日頃から結構料理やスイーツに使うが、今回もおからを使ったクッキーにするらしい。

当初は普通のクッキーにしようかと考えていたが、先程秋の試作スイーツを配った時にカロリーを気にしてダイエットしてる子が居たので、いっそカロリーを抑えたクッキーにしてみようかと考えたようだ。


「ダイエット食品のような物でしょうか?」

「どうしようか? 正直あんまりカロリー削り過ぎると味が落ちるしな~」

カロリーを抑えるという横島の話に、夕映はよくテレビなどで見かけるダイエット食品を思い出す。

ただ横島としてはどこまでカロリーを削るかの加減で迷っていた。

当然のことながら明確に比べると砂糖やバターを使ったクッキーの方が美味しいのは確かで、味とカロリーのバランスは想像以上に難しい。

まあ横島が持つ技術と経験があればカロリーを抑えても美味しく作れるが、極論を言えば横島が普通に作った物には敵わないのだ。

意外にも味には妥協したくない横島は、カロリーと味のバランスに悩み始める。


「そういえばダイエット食品って本当に痩せるの?」

「個人差があるようですが一応痩せるようですよ」

横島が悩む中、明日菜は少し胡散臭げにダイエット食品の効果を疑問視するようなことを口にした。

いろいろなダイエットが流行っては廃っていくのはこの世界も変わらなく、本当に効果があるのか疑問に感じるのも同じらしい。

夕映なんかは一応個人差により効果はあるらしいとは言うが、元々の生活習慣や体質を変えねば意味がないのは確かだった。


「まあいっか。 とりあえず一回作ってみよう」

少しの間考え込んでいた横島だったが、元々深く考えるタイプではないだけにとりあえず試しに作ってみることにする。

木乃香とのどかがレシピや作り方をノートにメモしながらお菓子作りをしていくが、タマモは先程貰ったぬいぐるみを抱えたまま興味津々な様子で見つめていた。

毎日いろんな料理を作っている横島だが、タマモからするとそれは魔法に近いのかもしれない。

自分の知らない美味しい物が出来上がっていく姿を見てるだけで、自然とわくわくとしてしまうようだった。



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