平和な日常~秋~

食事が終わると午後は二時間ほど自由時間になる。

この牧場では午前の見学や手作り体験以外にも動物との触れ合いや乗馬体験なんてのもあり、乗馬が苦手な人の為には馬車による牧場散策なんてのもあった。

それに涼しく自然豊かな牧場で、ただ目的もなくのんびりと過ごすのもいいらしい。

あやかと千鶴に加えまき絵・裕奈・古菲など何人かの少女は乗馬体験に行き、亜子・アキラ・楓・鳴滝姉妹なんかは動物との触れ合いに行った。



「超さんどうしたんですか?」

一方超鈴音は何故か牧場の柵の付近で一人牧場と遠くに見える山々を見ている。

葉加瀬はそんな超に何かいつもと違う空気を感じ声をかけるが、超は何とも言えないような遠い目をしていた。


「ちょっと昔を思い出していただけネ」

どこまでも澄んだような青空と生命の輝きに満ちた自然の素晴らしさは、葉加瀬にも理解出来ないだろうと超は密かに思う。

赤茶けた大地に生まれ、僅かな人々が肩を寄せ合いなんとか生きていた頃を思うとここは本当に楽園のようだった。

あの頃の仲間達にこの風景を見せてやりたい。

いや仲間達がこんな幸せな世界に生きる未来を自分が作らねばと、超は決意を新たにする。


(でも……、私が何をしてもあの未来は変わらない可能性があるネ)

思わず拳を握り締めた超だったが、彼女には一つの不安というか迷いがある。

それはこの世界と超が生まれた世界は、すでに繋がってないのではという疑問だった。


(この世界では私が生まれない可能性があるヨ。 もし生まれないはずの私がこのまま消えないとすれば、それは世界は一つではないということ)

超の迷いの原因は世界の在り方である。

ナギとネギの二人の英雄の血を引く超だが、当然子孫を残すには母親になる人物も必要だ。

しかしこの世界ではネギの人生が超の知る歴史とは全く異なり、ネギが歴史にある伴侶と巡り会えるか全くわからない。

元々未来の仲間達も時間移動する手段こそ見つけだしたが、時間移動が歴史や世界に与える影響などは全く分かってないのだ。

極端な話をすると超ですらSF的な仮説の段階を抜けてなく、歴史を変えた先にあるモノは未知の世界だった。

すでに歴史が大きく変わったにも関わらず、超自身に何の影響もない現状はある一つの可能性が高いことを超に教えている。

それは世界は一つではないという真実だった。


(もし仮に世界が一つではないとすれば、私はいったい……)

本来超が救いたかったのは未来の仲間達である。

しかし世界が一つではないとなると、いくら超が歴史を変えてこの世界を救っても未来は変わらないことになるのだ。

因果率を越えて世界を越えても救いたい仲間達がいるのだが、このままでは出来ないのかもしれない。

雄大な自然を見つめながらも超は自身がいつ消えるかもしれない恐怖と戦い、これから先に何を成すべきか静かに考え続けることになる。

その先がどれだけ茨の道だろうと、最早後戻りなど出来ないのだから。



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