平和な日常~秋~

「いらっしゃい~」

一方横島が居ない店だが、何の問題もなく木乃香とのどかが営業を続けていた。

時間が夕方なこともあり学生達が集まっているが、基本的な喫茶店のメニューは木乃香でも十分なのだ。

最近は店のメニューならば、横島の味とほぼ変わらないクオリティの料理を提供出来ている。

実際木乃香は驚異的なスピードで料理の腕前が上がっているが、それに気付いているのは超と五月くらいであり横島と木乃香自身はほとんど気付いてなかった。


「そういえば木乃香、来月の体育祭でやる料理大会に出るの?」

そんなこの日だが、カウンター席に座る中等部の少女達が体育祭の話題を話している。

最初は自分達がどれに参加するかなど話していたが、途中で料理やスイーツを運ぶ木乃香に視線がいくと木乃香が体育祭の料理大会に参加するのか尋ねていた。


「うちは出えへんよ」

興味津々な様子の少女達に木乃香は迷うことなく参加しないと言い切る。

麻帆良学園の体育祭が来月あることは前に説明したが、体育祭の内容は相変わらずお祭りに近く文科系というか技術系や芸術系の競技も結構多かった。

話に出た料理にしても和食・洋食・中華・スイーツの四部門があり、中華部門の料理大会の昨年の優勝者は超鈴音である。

もちろん史上最年少の優勝であったが、超の場合は史上最年少の記録がいろいろあるので今更でもあるが。

少し話は逸れるが他にも様々な大会があり、変わった競技だと海釣り大会やヨットレース大会なんてのもある。

こちらは会場が麻帆良ではなく別になるのだが、実は麻帆良学園には麻帆良以外の場所にも分校というか専門学校があるのだ。

中でも一番大きい分校は千葉県の某所で、水産関係や海に関係する学校や学部がある地域がある。

そこは麻帆良学園千葉分校と呼ばれており、一つの村ほどの広さの土地が丸々麻帆良学園の私有地であった。

ちなみに千葉分校にも当然雪広や那波の支社があり、千葉分校には両グループの工場なんかも存在する。

もっとも体育祭の主な競技は麻帆良で行うので分校の生徒も基本的には麻帆良に集まるが、海に関連した競技や大会は千葉分校で行われるので麻帆良から千葉分校に行く者も少なくない。


「出てみたらいいんじゃないの? 流石に超さんのいる中華部門はきついだろうけど、スイーツ部門とかならいいとこ行くと思うけどな~」

話は戻り中等部の少女達は木乃香が料理大会に出ればいいとこまで行くと考えてるようだ。

ただ木乃香はあまり気が進まないらしく、体育祭自体に参加する予定はないらしい。


「うちは応援してる方がええわ」

この辺りは木乃香らしい認識なのだろうが、基本的に人と競うのがあまり好きではないようである。

加えて料理は楽しいが、どちらかと言えば横島と一緒に和気あいあいと料理するのが好きなのだ。

料理大会に出たいとか優勝したいなんて気持ちは全くなかった。



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