平和な日常~秋~

一方異空間アジトの某所にある船舶用の全天候型の大型乾ドックの一つでは、この日ハニワ兵の賑やかな声と共に紅白のたれ幕が飾られていた。

見物人らしきハニワ兵も多数集まっており、日頃は飲食をしないハニワ兵がお酒の準備をするなど賑わっている。

巨大なドックに小さなハニワ兵達が集まる様子は非常にシュールなのだが、残念ながらそれを指摘するような人間はこの世界にはいない。

実はこの日は初めて建造した空中艦の一番艦が完成した進水式なのだ。

そもそも空中艦が船なのか飛行機なのかで少し悩んだハニワ兵達だが、建造した場所が船舶用のドッグだったこともあり船として進水式をすることにしたらしい。

土偶羅の計画の元で順次計画されている空中艦だが、その大きさ故に建造場所を船舶用のドックにしていた。

ただこのドックに関しても当然普通のドックではなく、ドクターカオス設計による魔法科学専用の船舶ドックである。

ドック内の重力や霊的環境の操作はもちろん、魔法科学や兵鬼技術の使用を目的とした船舶の建造と補修を目的に設計されたドックだった。

かつての神魔戦争初期には、ここで建造された艦艇が自衛隊や米軍などに売却された過去もあったりする。

今回完成した空中艦は駆逐艦クラスであり、兵装に関しては対空・対地など用途に合わせて換装するシステムを採用していた。


主機関はカオス式核融合炉二型。

推進システムはカオスフライヤー七型。

見た目は鮫のような船体のスリムな空中艦である。

この空中艦の特徴は地球や宇宙空間での運用も可能ということと完全な無人艦ということだろう。

それというのも元々横島達には軍を編成するような人材は居ないため、建造する空中艦は基本的には無人艦が多い。

有人艦に関しても当然建造はするが、こちらは純粋に魔法世界の技術で建造する予定である。

現状では優先順位として技術的にすでに確立してる無人艦を優先的に建造しているが、有人艦もそれなりに建造する計画のようだ。

ちなみに艦名に関しては横島も土偶羅もあまり必要性を感じてないので未定のままである。


「ポーー!!」

賑やかな雰囲気の中で指揮官タイプなのか少し地位が高そうなハニワ兵が声を上げると進水式が始まった。

船体に酒をかけるなどやることは普通の進水式と変わらなく、正直言えば必ずしも必要性がある訳ではない。

ただ単にハニワ兵達が好きでやってるだけだった。

麻帆良に居るハニワ兵もそうだが喜怒哀楽があるので自分達が作った物が完成するのは嬉しいし、無事に働いてほしいと普通に願ってもいる。

結局この日は初の空中艦進水式を記念して、彼らはお酒を飲み宴会をするらしい。

ちなみに進水式や宴会なんて物をハニワ兵に教えたのは横島達ではなく、彼らが異空間アジトにある情報ライブラリーから人間の習慣を見つけて勝手に覚えただけである。

異空間アジトにはアシュタロスが集めさせたアカシックレコードほどの膨大な情報があり管理は土偶羅がしてるが、重要機密関係を除いてハニワ兵には公開されていた。

まあ別に土偶羅もハニワ兵を楽しませる為に情報を公開したのではないが、結果的にハニワ兵は人間の情報に一番興味を持ち特に娯楽関係は自分達で各地に映画館を建てて上映会をするなど楽しんでいる。

最近どっか横島に似てきたのではと、土偶羅は時々頭を抱えているとかいないとか。



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