突然だが話は少し変わり九月に入った魔法世界では、新たな歴史の変化が起きていた。

なんと新オスティア総督クルト・ゲーデルが任期途中にも関わらず、突然総督を解任されてメガロメセンブリアに戻ることになったのだ。

突然の解任劇にその話はメガロメセンブリアのみならず魔法世界全体に噂が駆け巡り、解任の原因を憶測する報道が魔法世界で溢れている。

しかしその実態はネギ・スプリングフィールドに関する裏工作の責任を取らされたようであった。

その政治力を疎まれオスティアに派遣されていたクルトだが、元老院の目が届きにくいことをいいことに、ネギの件以外でもいろいろと裏工作をしていたらしい。

無論クルト自身は信念がありメガロメセンブリア市民の為に行動したらしいが、元老院上層部からするとこれ以上の揉め事は不要だと結局メガロメセンブリアに戻されることになっていた。

奇しくも来年は戦後二十周年になることもあり、戦略上の要所であるオスティアでこれ以上クルトに好き勝手させる訳にはいかないと考えたようである。

加えてクルトの仲間であった親しい議員や軍の士官も、過去の不正資金や愛人問題などを掘り返され議員失職や軍の左遷に追い込まれた者もいた。

クルト自身は過去の経歴から何もしなくても元老院選挙には受かるからいいが、彼の同志はそうもいかない。

過去に不正などなかった議員は次の選挙での落選に向けた圧力など、硬軟織り交ぜた工作でクルトの周辺人物は半壊状態に追い込まれてしまう。

通常メガロメセンブリア元老院は各派閥の均衡によりあまりこの手の過激な報復は行われないのだが、今回は過激派のみならず穏健派まで怒らせたことが致命的だった。

以前からの度重なる過激な工作に元老院はクルト封じ込めに本気になってしまったのだ。

元老院に戻されたクルトは何の役職もないただの議員に戻されて、厳重な監視下に置かれることになっている。

元老院は今回のクルト・ゲーデルの解任について、公には元老院議員内での配置を換えの一貫だとして来年の戦後二十周年を目指した体制の強化だと報道した。

ただクルトは大戦の英雄の一人なので、魔法世界の一般の人々はまた政争か何かでクルトが追い落とされたのだろうと噂をすることになる。

しかしクルト・ゲーデルの失脚の原因がネギ・スプリングフィールドの一件と関わりがあるだろうとの真相は、魔法世界各国上層部や地球側の各国魔法協会上層部には伝わることになった。

流石に今回の一連の報復は目立ち過ぎたことで、勝手な行動が目立つクルトの力を削ぐ目的だと各国上層部や魔法協会上層部は見抜くことになる。

なお今回クルトは策士策に溺れるという言葉が正にその通りになってしまったが、彼はその後も内心の怒りは決して表には出さずに相変わらずのポーカーフェースで飄々と元老院議員を続けていくだろう。

彼が築き上げて来た人脈や組織力の大半は失ったが、それでもまだ彼は自分の出番が来ると信じているのだ。

今はクルトへの報復で一致してる元老院も落ち着けば再び各派閥で対立が起こる。

そうなれば再びクルトが動くチャンスはいくらでもあると確信があったようだ。

今は静かに力を蓄えようと彼は心を落ち着かせてこの先を見ている。


もっとも彼はすでに要注意人物として各方面から警戒されてる現状を少し甘くみていたようだが。

何はともあれ彼が持つ力のほとんどを失ったのは確かだった。