平和な日常~秋~

午後にはさよの歓迎会という名目で2-Aの少女達とその場に偶然居合わせた少女達が相変わらずの様子で騒ぐが、最早珍しくはなく恒例行事であった。

ただ流石に次の日から授業があるので、今回は割と早めに切り上げて終わっていたが。


「時空振か……」

そしてこの日の営業が終わった横島が店内の掃除をしていると、土偶羅が超鈴音の過去の追跡調査の途中経過を報告に来ていた。


「奴の過去を遡ってみたが、奴は去年の一月に時空振と共にこの世界に姿を現している。 結論から言えば奴も異なる世界から来た者だ」

土偶羅の調査能力をもってしても半年たった現状でも超の過去は掴めず、土偶羅はいよいよ過去視を行ったようだ。

過去視とは言葉の通り過去を見る行為である。

元々横島と土偶羅は異世界の存在であり、厳密に言えば現在の麻帆良よりも未来の時空から来たことになる。

本来の異空間アジトは全ての世界から独立した一つの世界であり、横島は異空間アジトから麻帆良に来る場合は時間や次元を越えて来ていた。

従って異空間アジトのメインシステムを使えば、時間と世界に関係なく自由に行き来できる。

そんなシステムを管理する土偶羅が過去を見るのは扱く簡単なことだった。


「偶然じゃないんだろうな……」

「追跡調査は可能だが、恐らくは未来の時空になるだろう。 追跡調査するか?」

超が異なる世界から来たという事実は、横島にとっても重いモノである。

そもそも時間移動は変えれることしか変えれないが、それは神魔の視点や価値観からの話で人間の視点からすると変えれることはかなり多い。

仮に革命や大戦の一つや二つ起こしても百年や千年単位で見ると似たような歴史になる可能性が高いが、変わった世界は新たな平行世界として元の歴史とは異なる未来へ向かっていく。

超の目的は不明だが、上手く立ち回れば大抵の目的ならば叶うだろう。

それ故に土偶羅がわざわざ報告に来たのだ。


「因果率に引っかからないように調査出来るか?」

「当然だ。 時空間への影響は最小限に留める」

今回土偶羅が直接来た理由は、問題の重要性の他にもこの後の調査が未来視になることへの許可を求めたものだった。

実は過去に関しては基本的に一つな為に過去視は土偶羅の権限で可能だが、未来視は因果率に関わるので横島の権限になっている。

まあ正確に言えば異分子である横島の存在も因果率を狂わせる原因の一つなので、土偶羅はそれを世界に重大な影響が及ぼさないように調整するのも仕事なのだが。

未来に関しては一つではなく無限に可能性が存在するので、あまり一つの未来に関わるとその未来に現在の麻帆良の世界が引っ張られる可能性がある。

元々世界を管理するような最上級神魔ならばともかく、横島と土偶羅は経験も少ないので慎重にならざる負えない。

横島は一瞬関わらないで放置しようかとも考えたが、下手に超を放置して世界の流れが変わってからだと対応が難しくなる。

超の目的は最低限はっきりさせる必要があった。


「追跡調査してくれ。 彼女の本来の世界がこの世界と無関係ならいいが、万が一未来の一つなら後手に回りたくない」

現状で確実なのは超鈴音がこの世界に存在しなかった過去があるというだけだが、彼女の行動や生き方を見ると何かしらの目的があり、それがこの世界に少なからず影響を及ぼす可能性が高いのを横島と土偶羅は理解している。

情報は何より重要であり、知る者と知らざる者では天と地ほどに差が出来てしまう。

横島は面倒事はゴメンだが、かと言って自分も巻き込まれる可能性がある以上は放置は出来なかった。

土偶羅の調査はいよいよ超鈴音の核心に迫りつつあった。


3/100ページ
スキ