平和な日常~夏~2

墓参りから数日が過ぎてお盆も最終日になるが、麻帆良の街は相変わらず観光客が多かった。

まあ麻帆良祭ほど観光客で混雑する訳ではないが、麻帆良市内の名所や遊園地などのレジャー施設は関東圏のみならずお盆休みを利用した全国の観光客で賑わっている。

麻帆良学園の警備部門はこの時期も結構大変だが、生徒が少ないせいか麻帆良祭のようなトラブルは少ない。

加えて大学生や高校生が夏休みのアルバイトとして臨時の警備員で働いてることもあり、人員のやりくりは麻帆良祭よりは楽なようだ。

一方の関東魔法協会の警備部門はこの時期も基本的には平常時と同じく、重要施設などの拠点を中心に配置をしておりあまり表に出ることはなかった。

まあ魔法協会の人員とて日本人がほとんどであり、お盆は人員の半数は休みになっている。

それでも最低限の戦力などの人員は当然維持しており、今まで問題が起きたことはない。

実際魔法協会員は基本的には表の職業も持っていることから、サービス業を中心にした魔法協会員はこの時期も働いている。

教師など学校関係者の魔法協会員はこの時期休みを取れるが、学校関係者は日頃忙しいのでこの時期くらいは休みたいのであろう。



そしてお盆期間中の横島の店はといえば、やはり学生が少ない影響が大きくお客が少ない日々が続いていた。


「お昼はそばにするか」

お客が減って暇になった横島は明日菜の夏休みの宿題を教えたり、好きな料理を作ったりと相変わらず自由な時間を過ごしている。

夏休みの宿題に関してはバイト中なので明日菜はするつもりはなかったのだが、暇だった横島から誘って教えていた。

明日菜はいいのかなと気にしているが、そもそも横島のバイトに対する価値観は美神事務所時代とあまり変わってない。

忙しくなったら働けばいいとしか考えてないようだ。


「おそばですか?」

「ああ、打ちたてのそばは美味いぞ」

明日菜が宿題に頭を悩ませる中、横島はさよとタマモを前に今日はそばにしようと言い出す。

地下からそばの実と石臼を持って来てそば粉を作る段階から始めるそば打ちは大変であり、正直忙しい時だと難しいだろう。

興味津々な様子で見守るタマモとさよの前で、横島は一つ一つ作業を重ねてそばを打つ。

途中で宿題に煮詰まった明日菜や偶然店に居た常連の女の子なんかを加えて、何故かそば打ち体験を始めるが横島の店ではたまにあることである。

流石に道具の数が少ないので交代しながらそば打ちをしていくが、全員初めての体験らしく楽しめてるらしい。


「おっし、後は茹でるだけだな」

まるで家庭科の実習かお料理教室のような雰囲気の中で調理は進むが、意外というか料理には凝り性な横島はそばだけでなく茹でる水にもこだわっていた。

そのまま美味しいそばと水で打ちたてのそばをお昼ご飯に頂くのだが、一応横島の説明では賄いらしい。

もっとも横島が食べたかっただけなのだと、その場に居た者は当然気付いているが。

そんな訳でさよやタマモは、打ちたてのそばの美味しさを初めて知ることになる。

最早お盆と関係ないが、それはそれで楽しい日々だった。

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