さて暑さのピークである午後二時を過ぎると海水浴場からは徐々に人が減っていく。

しかし横島と少女達は来る途中に買ったスイカやメロンで涼みつつ、まだまだ海を満喫していた。

木乃香や夕映達は遊び疲れたのかビーチパラソルの下で読書をしており、タマモは先程からさよや鳴滝姉妹と一緒に砂でお城を作っている。

他には楓や古菲などの元気な者達は、泳いだり遊んだりして相変わらず活発に動いていた。

横島は少女達にあれこれと振り回されながらそんな午後を過ごしていくが、太陽が西の空に傾き始める頃になるとようやく少しだけ落ち着いてきている。


（そういや、こんな時間だったな）

つい先程までビーチバレーに参加していた横島だが、高畑・刀子・楓・古菲などが圧倒的な強さを見せており横島はボロ負けだった。

まあ高畑と刀子は一応手加減はしたようだが、教師としての立場もあり生徒にあまり情けない姿は見せたくなかったのかもしれない。

そんな二人に比べると横島は気楽であり意図的に一般人のレベルに抑えて楽しんでいた。

というか横島も周りの一般人の少女達と同等程度の活躍はしたのだが、古菲が高畑や刀子の強さを感じ結構力が入ってしまうと高畑や刀子も合わせるように対応してしまったようである。

それでもギリギリ一般人の範囲に収まる動きだったので問題はないのだろうが、まるでオリンピック選手のような試合をしてしまった彼らは古菲や楓のみならず高畑や刀子までも結構負けず嫌いなのかもしれない。


（昔を思い出す時間が増えたってことは、それだけ年をとったってことなんだろうな）

ビーチバレーも一段落して横島は砂浜に座り込み漠然と海を見つめていたが、ふとした瞬間に昔のことを思い出してしまう。

年を重ねる事に昔を思い出す時間が増えたのは、自分がそれだけ年を重ねたのだろうと思うと少し複雑な気持ちになってしまうようだ。


「何を考えてたんですか？」

僅かな時間過去を思い出していた横島だが、いつの間にか千鶴が隣にいる。

どうやら横島に飲み物を持って来てくれたらしく、横島はそれを受け取ると一気に半分近くまで飲んでしまう。


「いや～、今日はナンパ出来んかったな～って思ってさ」

珍しく千鶴の接近に気が付かなかった横島は少し驚きの表情を見せるが、すぐにいつもの調子に戻っていた。

千鶴はそんな横島の嘘を見抜きながらも何も指摘することなく、ただ笑みを浮かべている。


「へ～、マスターまだ遊び足りないの？　いいわよ。　気が済むまで付き合ってあげるわ」

しかし横島のナンパ発言が気に障ったのか、近くにいた美砂はニッコリと笑顔を見せて横島を再び海に引っ張っていく。

そして一人が動くとビーチバレーが一段落して休んでいた少女達が、また元気になり動き始める。

結局横島は薄暗くなるまで少女達に振り回されることになるが、それは相変わらず女心を理解してない横島の自業自得だろう。

はっきり言うと今日海に来たメンバーは、誰も横島が本当にナンパするとは信じてない。

しかしまるで自分達を眼中にない子供のように扱う横島が、少し気に入らないのも確かであった。

高畑や明石なら理解するが、年齢が近いように見える横島に子供扱いされるのは微妙にプライドが傷付くらしい。