平和な日常~夏~2
結局美砂の誘惑から逃げ出した横島は、タマモと一緒に近くを散歩に行っていた。
海水浴をしている砂浜を過ぎると岩場があり、こちらも親子連れやカップルや釣り客で賑わっている。
「おっ、魚と蟹がいるな」
岩場の一部は満ち潮の時には海に沈むらしく窪みのところには、海水と一緒に小さな蟹や魚が取り残されている。
横島が見つけ教えると、タマモはやはり興味津々な様子で窪みにいる蟹や魚を見ていた。
「おさかなさん、だいじょうぶ?」
小さな窪みの海水は真夏の日差しによりかなり温くなっている。
どうやらタマモは閉じ込められたのだろうと思ったらしく、声をかけるが残念ながら会話が成立することはない。
そのまましばらく魚や蟹を見ていたタマモは、突然小さな魚を手で捕まえると海まで運び放してやった。
蟹は自分で歩けるからいいだろうと思ったようだが、魚がどうしても気になったらしい。
海に放された魚はすぐに見えなくなるが、元気に泳ぐ姿にタマモは嬉しそうに手を振る。
(優しいな)
一方そんなタマモの様子を見ていた横島は、少し感慨深げな表情をしていた。
元々妖怪や動物は無益な殺生はしないが、他の者を助けることもあまりしない。
タマモの行動はどちらかと言えば人間に近く、麻帆良での日々で学んだことだろう。
日々成長して変化していくタマモの未来が、横島には楽しみでもあり不安でもあった。
その後も岩場に居る貝類や海藻などを見つけると、タマモは興味津々な様子で観察をする。
そんな時釣りをしている老人を見つけると、それが気になるらしいタマモは横島と一緒に老人の背後で静かに釣れるのを待っていた。
「お嬢ちゃん釣りが好きなのかい?」
無言のまま釣れるのを待っていたタマモだったが、突如老人が後ろを振り替えりタマモに声をかけてくる。
釣りが好きなのかと聞かれたタマモは素直に分からないと答えると、老人は笑ってタマモを呼び寄せた。
「いいかい、竿をよく見るんだ。 魚が釣れたら竿が動くからそうしたら吊り上げるんだよ」
老人はタマモが釣りを知らないと悟ると優しくやり方を教えて自分が使っていた竿を一本タマモに貸し与える。
小さなタマモには少し大きい竿だったが、タマモは竿に手を添えて静かに魚が釣れるのを待つ。
それから十数分ほど過ぎた頃、突然竿がピクピクと動くと釣り糸が海の中に引っ張られていく。
突然のことにタマモは多少ビックリした様子だったが、老人は竿を持つのを手伝いつつタマモにリールの糸を巻かせる。
「結構な大物じゃな」
数分の格闘の末にタマモが吊り上げたのは、三十センチ程度のセイゴだった。
このセイゴは出世魚で成長すりとスズキになる。
老人は朝から釣りをしていたらしいが、今日はあまり成果がないらしく今日釣れた中では一番の大物らしい。
「釣った魚はな、美味しく食べてやるのが一番なんじゃよ。 これはお嬢ちゃんが釣ったんじゃから、今夜にでも料理して食べてやるといい」
魚が釣れたことに素直に喜びを見せるタマモだが、一方では魚が可哀相だという感情もある。
そんな微妙なタマモの反応に気付いた老人は、優しく釣った魚を食べることが大切だと教えていく。
それはタマモが本能的に持つ動物や妖怪としての価値観に通じるモノがあったことを老人は知らない。
全くの偶然ではあるが、タマモは生きるという意味をほんの少しだけ学んでいた。
海水浴をしている砂浜を過ぎると岩場があり、こちらも親子連れやカップルや釣り客で賑わっている。
「おっ、魚と蟹がいるな」
岩場の一部は満ち潮の時には海に沈むらしく窪みのところには、海水と一緒に小さな蟹や魚が取り残されている。
横島が見つけ教えると、タマモはやはり興味津々な様子で窪みにいる蟹や魚を見ていた。
「おさかなさん、だいじょうぶ?」
小さな窪みの海水は真夏の日差しによりかなり温くなっている。
どうやらタマモは閉じ込められたのだろうと思ったらしく、声をかけるが残念ながら会話が成立することはない。
そのまましばらく魚や蟹を見ていたタマモは、突然小さな魚を手で捕まえると海まで運び放してやった。
蟹は自分で歩けるからいいだろうと思ったようだが、魚がどうしても気になったらしい。
海に放された魚はすぐに見えなくなるが、元気に泳ぐ姿にタマモは嬉しそうに手を振る。
(優しいな)
一方そんなタマモの様子を見ていた横島は、少し感慨深げな表情をしていた。
元々妖怪や動物は無益な殺生はしないが、他の者を助けることもあまりしない。
タマモの行動はどちらかと言えば人間に近く、麻帆良での日々で学んだことだろう。
日々成長して変化していくタマモの未来が、横島には楽しみでもあり不安でもあった。
その後も岩場に居る貝類や海藻などを見つけると、タマモは興味津々な様子で観察をする。
そんな時釣りをしている老人を見つけると、それが気になるらしいタマモは横島と一緒に老人の背後で静かに釣れるのを待っていた。
「お嬢ちゃん釣りが好きなのかい?」
無言のまま釣れるのを待っていたタマモだったが、突如老人が後ろを振り替えりタマモに声をかけてくる。
釣りが好きなのかと聞かれたタマモは素直に分からないと答えると、老人は笑ってタマモを呼び寄せた。
「いいかい、竿をよく見るんだ。 魚が釣れたら竿が動くからそうしたら吊り上げるんだよ」
老人はタマモが釣りを知らないと悟ると優しくやり方を教えて自分が使っていた竿を一本タマモに貸し与える。
小さなタマモには少し大きい竿だったが、タマモは竿に手を添えて静かに魚が釣れるのを待つ。
それから十数分ほど過ぎた頃、突然竿がピクピクと動くと釣り糸が海の中に引っ張られていく。
突然のことにタマモは多少ビックリした様子だったが、老人は竿を持つのを手伝いつつタマモにリールの糸を巻かせる。
「結構な大物じゃな」
数分の格闘の末にタマモが吊り上げたのは、三十センチ程度のセイゴだった。
このセイゴは出世魚で成長すりとスズキになる。
老人は朝から釣りをしていたらしいが、今日はあまり成果がないらしく今日釣れた中では一番の大物らしい。
「釣った魚はな、美味しく食べてやるのが一番なんじゃよ。 これはお嬢ちゃんが釣ったんじゃから、今夜にでも料理して食べてやるといい」
魚が釣れたことに素直に喜びを見せるタマモだが、一方では魚が可哀相だという感情もある。
そんな微妙なタマモの反応に気付いた老人は、優しく釣った魚を食べることが大切だと教えていく。
それはタマモが本能的に持つ動物や妖怪としての価値観に通じるモノがあったことを老人は知らない。
全くの偶然ではあるが、タマモは生きるという意味をほんの少しだけ学んでいた。