平和な日常~夏~2

その後少女達と一緒に料理を味わう横島だったが、流石に大人数が満足するだけの量があるはずもなく少量を味見する程度だった。

持参したクーラーボックスをテーブルの代わりにしてはいたが、座って食べるほどの量もないし何本かある箸で試食するような形である。

あやかや千鶴などは少し行儀が悪いと感じたようではあるがそれを指摘するほどでもなく、仕方ないなと苦笑いを浮かべる程度だ。


「足りないよ~」

「ねえ、もっと捕まえて来てよ」

新鮮な魚をそのまま生かした料理は当然好評だが、やはり少女達にとっては量的に物足りないらしい。

何人かの少女は楓と古菲に追加を要求して、二人もまたもう一度行こうとするが当然それは高畑や刀子達大人に止められる。

正直魔法関係者である大人組は、楓達が何を捕まえて来るか若干不安だったのは言うまでもない。

特に刀子は先程の横島の言葉を思い出し、クジラでも捕まえて来たら大変だと僅かに冷や汗を流してしまう。

まあ当の楓や古菲からすればそこまで馬鹿じゃないと言うだろうが、冗談のようなことを割と平然とやってしまうのが麻帆良の人間のクオリティだった。

早めに止めに入った刀子達大人組の判断は適切だろう。



食後横島が居ない間も泳ぎの練習をしていたタマモの休憩を兼ねて横島が荷物の番をすることにして、タマモと二人ビーチパラソルの下で一休みをする。

一応ビーチパラソルで直射日光の日差しは遮っているが、それでも地面からの照り返しもあり暑いのに変わりはなく海から吹き抜けていく風が気持ちよかった。

タマモに水分を取らせつつ、横島は視界に入る水着姿の女性や少女達をぼんやりと見つめている。

特に何かを考えてる訳ではないが、横島自身こうして海に純粋に遊びに来るのは当然久しぶりだった。

視界の中では刀子とシャークティが複数の少女達と一緒に海を楽しんでいるが、空気を読まずにナンパしてくる男達を迷惑そうに追い払っている。

他にもあやかや千鶴などは元より明日菜や木乃香でさえ時々ナンパされているが、みんな適当に追い払っているようだった。


(意外とナンパ待ちっぽい女も居るんだな)

時を経て良くも悪くも昔のように女だけに夢中になれないからこそ見えてくるモノもある。

ナンパを嫌う女も居れば、いい男との出会いを密かに求める女も居ない訳ではない。

砂浜に居る大勢の男女の悲喜こもごもの様子は、意外と見ていて楽しかった。

別に高見の見物を気取っている訳ではないが、かつては見えなかったそんなモノは横島にとっては新鮮である。


(あいつら……)

そんな時、横島は偶然見知らぬ女性がナンパ男に付き纏われているのを見つけていた。

女性は本気で嫌がってるが、ナンパ男は気にするそぶりもなく周りの人々も厄介事を避けて助ける気配はない。


(全く……)

そんなナンパ男に横島が一瞬不快そうな表情をした瞬間、ナンパ男は突然気を失って倒れてしまう。

その様子にナンパされていた女性はすぐさま逃げ出し流石に驚いた周りの人がライフセーバーを呼ぶが、ナンパ男は酔っ払ってる以外は特に身体には異常もないのでただの酔っ払いとして運ばれていく。

それは夏の海ではたまにある光景であり、誰一人不審に感じた者は居ない。

ただ一人タマモだけは一瞬横島から僅かな力を感じ不思議そうに横島を見るが、そもそもタマモはナンパ男を見てないので特に何も理解せぬまま時は流れていった。


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