平和な日常~夏~2

「おおー、よく似合ってるな」

その後着替えを終えた少女達が戻って来るが、一番に駆け寄って来たタマモを横島は抱き抱えて笑顔を見せていた。


「マスター、タマちゃん以外も女の子はいっぱい居るんですけど~」

まるで親バカのようにタマモだけを褒める横島に、若干面白くなさそうな美砂が詰め寄って来る。

彼女もまた今日の為に水着を買ったようで、横島の反応を楽しみにしてたらしい。

他にも複数の少女達が横島の感想を聞こうと待っているが、ほとんどの場合は一番年が近い男が横島だから感想を聞きたいのだろう。

まあ例外としては裕奈は父親の明石教授の元に行き、明日菜は高畑の元に行っているが。


「みんなよく似合ってるな~ 知り合いじゃなかったらナンパしちゃうだろうな」

水着を着た少女達に詰め寄られる横島は、まるでモテてるような雰囲気に上機嫌であった。

流石に昔ほど欲望をあからさまにはしてないというか出来ないが、それは横島も年を重ねたことを考えれば当然だろう。

加えて厳密に言えば今の横島は純粋な横島ではなく、魂のカケラを受け継いだ者達の影響もなくはない。

そんな横島だが心のどこかでは、昔のように振る舞えない自分に少し寂しくも感じている。

何も考えずに欲望に忠実に生きていた頃が少しだけ懐かしかった。


「マスター結構細いわね」

「でも、ああ見えて力と体力は結構あるのよね」

さて今度は男性組が水着に着替えて来るが、高畑や明石と比べると横島は細くて貧弱に見えてしまう。

元々体育会系には見えない横島なだけに違和感があるというほどではないが、麻帆良祭の準備や図書館探険部で力仕事をしている割には予想以上に細いと感じている。


「細いって言えば葛葉先生とシスターシャークティも凄いわね。 無駄がないプロポーションだわ」

他には高畑や明石もかなり鍛えた肉体だったが、少女達の注目は刀子とシャークティに集まっていた


来る前は刀子は中学生の少女達と比べられるのを随分嫌がっていたが、実際刀子のプロポーションは少女達が見ても惚れ惚れするほどである。

胸のボリュームこそ並み程度だったが、全体のバランスはまるでモデルのようであった。

その辺りは流石に魔法関係者として心身共に鍛えてる成果なのだろう。


「おし、それじゃあちょっと海に入ってみるか?」

全員が水着になったことで多少の騒ぎにはなったが、すでに気の早い者達は海で泳いでいる。

荷物は明石が見ていてくれるとのことなので、横島はタマモとさよと周りに居た少女達を連れて海に入ることにした。


「つめたい?」

少女達は一斉に海に入っていくが、タマモは相変わらず横島に抱き抱えられたままである。

押しては引いていく波を不思議そうに見ており、始めての海に少し不安があるのかもしれない。


「そんなに冷たくはないよ。 とりあえず足だけでも入って見たらどうだ?」

そもそもタマモの価値観では、海で泳ぐというのは素直に理解出来ないようである。

元々種族として最低限あるはずの知識やすら今だに思い出せてないだけにどちらかと言えば人間に近い価値観なのだが、それでもほんの僅かに前世とも過去とも言える価値観は残ってるのかもしれない。

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