平和な日常~夏~2

この日の集合場所は女子寮だったが、海までの移動手段は車だった。

当初は移動手段に電車も考えていたが、やはり人数の多さと乗り換えの大変さで車に変更になっている。

まあ車と言っても大型の観光用バスなのだが……。

本当は大きめな普通車を数台借りて分かれていくつもりだったが、レンタカーも結構値段が高く中学生にとって馬鹿にならない。

あまり頼るのはいけないと理解しつつも、結局はあやかと千鶴にレンタカーが安く借りれないかダメ元で頼る始末だった。

特に千鶴の実家である那波重工の百パーセント子会社には自動車会社が存在し、軽自動車から大型特殊まで幅広く製造販売していたりする。

末端にはレンタカー事業をしてる会社もあり、多少安く借りれないか期待してしまったようだ。

そんな移動手段の話はその後も二転三転していき、最終的にはバスを借りてみんなで一緒に行った方がいいのではとの話に落ち着く。

その過程で高畑と横島がバスの運転も出来ると言ったことから、結局麻帆良学園が複数所有する観光バスを一台格安で借りることになったらしい。

ちなみにこの麻帆良学園所有の観光バスも那波重工製であり、日頃麻帆良学園の課外授業やサークル活動や部活動などでよく利用されてるバスである。

当然ながらこのバスは学園側の使用が優先されるが、使用してない時は使用目的によっては学生や保護者などにも格安で貸し出しされていた。

通常なかなか中学生が借りることはないが、大学生が旅行で借りたり保護者が懇親会で借りたりということはまれにあることらしい。



「タマモ大丈夫か? 重いだろ?」

一方ハニワ兵の見送りを受けて自宅を出た横島達だが、横島もさよも両手に荷物を持っておりタマモも一つの荷物を両手で一生懸命持っている。

ちょっと重そうなタマモを心配する横島とさよだったが、タマモは大丈夫だと言いゆっくり歩き出す。


「車使えばよかったか?」

荷物の中身は大半と言うかほとんどが頼まれた朝飯の弁当だった。

せっかくだから朝ご飯に美味しい弁当が食べたいと頼まれたので、横島が朝の三時から作った弁当である。

横島宅から女子寮は歩いてもすぐだが、流石に三十人近い人数の弁当なだけに運ぶのも大変だった。

本当は車で女子寮まで運ぼうかとも思ったが、そもそもコブラは二人乗りだし女子寮の駐車場に一日中置くと不必要に目立ってしまうので徒歩で運ぶことにしたらしい。


(いい加減に車を変えるべきかな?)

女子寮までタマモに合わせてゆっくり歩く横島だが、家族が増えた現状ではコブラが使いにくいことに気付き車を変えようかと真剣に悩み始める。

タマモが狐形態になるか、さよの実体化を解除しないと三人で乗れない車は些か不便だった。

異空間アジトには使える車は他にもたくさんあり、代わりの車はいくらでもあるはずなのだ。


(まあ帰ってからでいいか)

そのまま次の車をどうするか悩む横島だったが、とりあえず今日は関係ないので後回しにする。

そうしてるうちに横島達が女子寮に到着すると、すでに女子寮の前には高畑が借りて来たバスが止まっていた。

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