平和な日常~夏~2

この頃異空間アジトの各地に点在する工業区の一部では、久しぶりにハニワ兵の活気で賑わっていた。

それと言うのも対魔法世界への対策の一つである、空中艦の試作艦の建造がいよいよ始まったのである。

以前手に入れた中古の空中艦などはまだ各種テストやら検診の最中だったが、すでに数種類の試験艦の建造を初めていたらしい。

現在異空間アジトにはかつてアシュタロスが製作した逆天号や、ドクターカオスが晩年に開発したカオスフライヤーシリーズが結構な数で存在するが、基本的にカオスフライヤーは戦闘機並みがほどほどで魔法世界のような巨大な空中艦は存在しなかった。

大きさだけでいえば逆天号は兵鬼なので大きさを自由に調整出来るのだが、正直逆天号は武装が強力過ぎて魔法世界では使い所に困ってしまう。

実は逆天号は神魔戦争の折にエネルギーを異空間アジトから直接供給するように一部システム変更して、横島達が結構使っていたのだ。

断末魔砲などの武装も対神魔用なため当時は非常に使い勝手がよかったのだが、あんなもの魔法世界で使えば一発で敵軍全部が完全消滅してしまう。

はっきり言えばオーバースペックで使いにくい兵鬼だった。

カオスフライヤーにしても初期型はともかく、後期型はアシュタロス系の技術まで入っているので使いにくい。

早い話が魔法世界のレベルに合わせた大幅なスペックダウンが必要なのである。



まあ土偶羅も兵器で魔法世界と戦争なんてするつもりは全くないが、空中艦の質と数はある程度揃えないと抑止力にならないのだ。

そもそも魔法世界を制圧するだけなら逆天号で断末魔砲をぶっ放すか、横島と戦闘用ハニワ兵で主要な場所を制圧した方が遥かに手っ取り早い。

ただそれを実行すると後々面倒になることは確実であり、最終的には横島の平和な日々が失われるのは明らかだった。

結局は魔法世界の標準的な軍事力で対抗した方が、後々面倒なことが少ないだろうとの判断なようである。

とりあえず解析が済んだ精霊エンジンを製作するために、いくつかの停止していた工場を動かしたらしい。

他には見た目を魔法世界の空中艦にして、中身をカオスフライヤーのシステムにした戦闘艦の建造も始めていた。

どのみち大量に空中艦を建造することに変わりはないので、建造する空中艦の半分はカオスフライヤーのシステムにした方が戦力的にも建造時間の短縮にも役に立つ。

とりあえず旗艦となるべく超弩級戦艦は、後期型カオスフライヤーシステムを用いた空中艦にするらしい。

異空間潜航能力や対神魔用のバリアに劣化版断末魔砲とも言える霊子砲やレールガンなどの通常兵器もかなり搭載予定であり、武装も旗艦だけはそこそこ強力にするようだった。


「こんなおもちゃなど使わんでも済めばいいのだがな」

基本的に土偶羅は魔法世界がどうなろうがまるで興味がない。

ただいざという時に横島が選べる選択肢を増やすのが仕事なのである。

土偶羅はその為に魔法世界介入のプランを幾つも準備していた。


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