平和な日常~夏~2

その後は刀子とシャークティを加えてパーティーは賑やかに続くが、二人はもちろんお酒ではなく冷たいお茶だった。

本当は二人で軽く一杯飲みに来たのだろうが、流石に生徒の前で自分達だけ飲む気にはなれないらしい。

仕事ではないのだが、だからと言って完全なオフにも出来ないのは広域指導員のつらいところだろう。


「また何か作るのですか?」

一方厨房には夕映とのどかがやって来ていた。

二人は他の少女達のようにあまりハメを外せない性格なだけに、賑やか過ぎる空間から一時的に避難して来たようだ。


「それを今考えてるんだ。 思ってた以上に食材が少なくてな」

何を作るか楽しみであり不安でもある夕映とのどかは興味深げに横島を見つめるが、横島はまだメニューを決めかねている。

はっきり言うと足りない食材は異空間アジトからすぐに取り寄せることができるのだが、最近は木乃香達が毎日バイトをしてるので大まかな食材の量を知っているのだ。

不自然に生鮮食品が増えると夕映などが食材の仕入に疑問を抱く可能性もあった。

これに関しては横島も最近は朝市などからも食材を多少は購入している。

基本的に横島は適当なので細かいことは気にしなかったが、夕映が横島の仕事に最近更に興味を持ち始めていたこともあってあまり以前のように好き勝手出来ないこともあった。


「まあこんな時間ですし、かるい物でいいのでは?」

「かるい物かぁ。 そうめんでも出すか」

イマイチ作りたい物が浮かばない横島は、夕映の言葉を聞いてそうめんの準備をする。

本当は野菜を使ったサッパリとした料理が作りたかったようだが、ない物ねだりしてても仕方がない。



その頃フロアの刀子達は数人の少女達と雑談していた。

パーティーと言っても基本的にはそれぞれに好き勝手に騒いだりおしゃべりしてるだけであり、中には店にあるトランプなどで遊んでる者もいる。

刀子とシャークティは基本的には聞き役に徹して少女達の話を聞いているが、特に刀子は話の内容が恋愛関係になると微妙に返答に困ってしまう。

相変わらず恋愛が苦手でありアドバイスを求められても困るのだ。

麻帆良の一般的な女子生徒は刀子の容姿から恋愛経験が多いと勘違いしてるのでよく相談されるが、青春時代を剣に生きた刀子に豊富な恋愛経験があるはずがない。

同じくこういった席では学生時代の恋愛話などを聞かれるが、正直語れるような恋愛話がない刀子は当たり障りのない話に終始するしかなかった。

まあ神鳴流がみんな刀子のように剣に生きてる訳ではなく、刀子が特別恋愛に対して不器用なだけなのだが……。


「そういえば先生もマスターと噂になってましたよね。 実際どうなんです?」

「どうって……、私は別にただの客ですよ。 ここの料理が美味しいのは皆さん知ってるでしょ?」

そのまま少女達と雑談していた刀子だったが、先程まで別のグループで騒いでいた美砂が刀子に直接横島との噂の真相を尋ねてしまう。

突然の質問に一瞬別人のように動揺した刀子の反応に、美砂は意外と脈ありなのではと感じる。


57/100ページ
スキ