平和な日常~夏~2

さてそのまま龍宮神社近くに移動した横島達は、出店がずらりと並ぶ場所に到着していた。

祭りなどで馴染み深い出店や屋台があったかと思えば、珍しい出店もあったりと様々である。


「あっ、お魚さんだ」

そんな中でタマモが最初に興味を示したのは金魚すくいだった。


「たべるの?」

「タマちゃんこの金魚は食べ物やないんよ。 鑑賞用や。 ペットみたいなもんやな」

どうやら金魚を知らないタマモは、この魚も捕まえて食べるのだろうと勘違いしている。

明日菜や夕映は金魚も知らないタマモに少し驚くが、自身もタマモと同じ年の頃は世間を知らなかった木乃香は優しかった。


「一緒にやってみるか? 楽しいぞ」

そんな木乃香の説明を聞いたタマモは、金魚すくいをしている他の客を興味津々な様子で見つめる。

基本的に学習能力は高いタマモなだけにやり方を見て学んでいるのだろう。

横島はそんなタマモに金魚すくいをやってみるように勧めて、木乃香達とみんなで一緒に金魚すくいを始めた。


「私こういうの苦手なのよね」

「私もあまり……」

横島がサラっと全員分纏めてお金を払ったので木乃香達も挑戦するが、明日菜と夕映はどうやら苦手らしい。

元々繊細な作業が苦手な明日菜とこの手の遊びの経験が少ない夕映は苦手らしいが、木乃香やのどかは意外と上手でとりあえず一匹目は捕まえている。


「すごいですね~」

一方の横島は、久しぶりの金魚すくいを楽しんでおり慣れた手つきで金魚を次々にすくっていた

そのスピードは凄まじくさよは驚きの声をあげたが、周りの客や店主は唖然としてしまう。


「久しぶりにやると楽しいな」

ついつい昔を思い出して本気で金魚をすくっていく横島だが、今の横島の感覚は人間とは比べるまでもないほど鋭い。

金魚の動きや水の流れを無意識に予測して次々に捕まえていくのだから、端から見ると凄まじいとしか言いようがなかった。


「そういえば金魚すくいは得意だって言ってたっけ。 かなり大量に捕まえてお母さんに怒られたって聞いた気がするわ」

横島自身は純粋に楽しんでるが、周りからは金魚すくいのプロなのかと疑いたくなる状況である。

明日菜は以前に横島が語った金魚すくいの話が本当だったのだと改めて感じていた。


「タマちゃんも結構上手いやん」

そして金魚すくい初体験のタマモだったが、横島の動きややり方を観察して真似していた。

その結果横島ほどではないが、地道に数匹捕まえている。

木乃香やさよ達に褒められると嬉しそうにニッコリと笑顔を見せて、横島のようにもっと捕まえようと頑張ろうとしてしまう。


「……横島さん、その辺りにしておいたら? お店の人泣きそうよ」

タマモが木乃香達とほのぼのとしてる中、明日菜は苦笑いを浮かべて夢中になってる横島の肩をポンと叩くとそろそろ終わろうと止めていた。

横島は楽しんでいるだけなのだが一人ですでに数十匹捕まえており、このままでは横島に全部取り尽くされると感じた店主が涙目だったのだ。


「一回全部取ってみたかったんだけどな~」

「冗談ですよね?」

涙目の店主を見て横島は少し恥ずかしそうに金魚すくいを終わるが、全部取ってみたかったと笑ってごまかすと冗談なのか本気なのか判断が付かない店主は顔色が更に青くなっていたりする。



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